キャットファイト (2016)：映画短評

　暮らしは裕福だが退屈で満たされない戦争成金の保守系人妻と、プライドだけは高いがさっぱり売れないリベラルな芸術家。学生時代から犬猿の仲の女性2人が再会し、互いへの憎悪をむき出しにして壮絶な血みどろバトルを繰り広げる。サンドラ・オーとアン・ヘッシュによる、女子プロレスさながらの泥臭い格闘シーンも見ものだ。
　言うなれば、分断された国民同士がいがみ合う今のアメリカを痛烈に風刺したブラック・コメディ。トランプ時代の近未来を占うような背景設定にも皮肉が効きまくっている。作り手自身の政治的な主義主張に偏ることなく、あくまでも人間のどうしようもない愚かさを描くことに焦点を絞ったところは非常に賢明だと思う。