略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
誰もが被害者ヅラをせず、自分の人生を生きている。大阪を舞台にした人間ドラマには、そんな作品が多いが、本作もバイタリティにあふれている。
基本的にはとある家族にスポットを当てた人情ドラマで、父の後妻が自分よりはるかに年下になる女性のドタバタ劇。笑いの要素には事欠かないし、グッとくる場面も多い。
鶴瓶演じる父を扇の要に据え、その娘役の江口のりこと、後妻を演じる中条あやみが騒動による心の変化をドラマとして体現。笑顔と泣き顔で感情をスパークさせる後者は確かに魅力的だが、物語の磁場として作用する前者の不機嫌な顔の魅力は圧倒的に素晴らしい。
佐藤嗣麻子監督の名を映画の分野で久しぶりに聞いたと思ったら、じつに『アンフェア』シリーズ以来。すなわち9年ぶりとなるが、世界観の作り込みはさすが。
安倍晴明と源博雅の若き日のストーリーは原作の前日談というよりは、滝田洋二郎監督による『陰陽師』シリーズ2作のそれ。キャラクターを重視しつつミステリーを転がす、魑魅魍魎の平安ファンタジーに引き込まれる。
冷ややかな晴明と、素直過ぎてヌケている(?)博雅の、それぞれの後の成長をうかがわせるのも味。山崎賢人と染谷将太の組み合わせもよく、テンポよく楽しめる。
いきなり流れるラモーンズだけで時代を超越する『マリー・アントワネット』感。S・コッポラ作品でしばしば語られる“ガーリー”という空気の濃度も同作に近い。
プレスリーとの恋で得たセレブライフにおける、ゴージャスな愛らしさはファッションやインテリアなどの生活のなかに顔を覗かせる。少女と女性の顔を行き来するC・スピーニーの好演は、この世界にフィットして、まさにハマリ役。
『マリー・アントワネット』と異なるのは、セレブ生活ではなくラブストーリーに焦点を絞っていること。ときめきがピークに達し、その後は失望が少しずつ大きくなる。そんな感情に寄り添っている点がいい。
フリーハンドで描いたような線と、シンプルかつメリハリの効いた色彩。CGアニメの逆を行くアナログ感覚が、まず目を引く。
通常のアニメ制作とは異なり、まずセリフを収録してから作画に取りかかったとのこと。ビジュアルが生き生きとしているのは、その効果もあるのだろう。何が何でもチキンを食べたい、そんな子ども心の自由な欲求が躍動的にとらえられている。
監督は子どもに見せるために作ったというが大人が見ても面白く、心の暗闇から引き出される記憶や食肉に関する考察など、興味深い要素も。物語のリズムがそのまま重なり、加速する音楽も巧い。
『オーメン』の前日談は、ありそうでなかった企画。時代のうねりという事実を踏まえつつ、そこに権力の野心を絡めた興味深いドラマが展開する。
舞台が1970年代のローマというだけでホラーファンとしてはときめき、ジャーロ映画のような様式美にオカルトを絡めたつくりに見入る。
見習いシスターを主人公に据えた点も技ありで、女性が悪魔と、そして悪魔的なシステムと格闘する展開が面白い。主演のN・T・フリーの無垢な存在感に加え、A・スティーブンソン監督の丹念な演出も光る。ガールパワーの物語としても見応えあり。