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パッドマン 5億人の女性を救った男 (2018):映画短評

パッドマン 5億人の女性を救った男 (2018)

2018年12月7日公開 137分

パッドマン 5億人の女性を救った男

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

清水 節

男を突き動かした“妻への深い愛”を超える原動力は何だったのか

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 2001年インドの実話だというから驚きだ。市販の生理用ナプキンが高価ゆえ不衛生な布を代用している妻の姿を見て、男は奮い立つ。親族や世間から変態扱いされても、とことん安価なナプキン作りに邁進するポジティブな活力が、インド映画ならではの悲喜劇を生む。サクセスの着地点が小さくまとまっていない点が、実にドラマティックだ。それにしても、度重なる偏見と挫折を乗り越え、なぜ彼はナプキンに執着したのか。“妻への深い愛情”では説明しきれない狂気にも似たパッションが、どのように育まれたものなのか、最後まで解明されない。古い因習を打破したのは、彼の情熱よりも世界的な成功だったという現実が前面に出てしまった。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

これぞ、男の中の男だ!

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

すべてが妻への愛から始まったところが、まず素敵。いまだに男尊女卑がひどいインドにおいて、主人公は妻のために何でもしてあげる人。生理の辛さを知った時にも何とかしてあげたいと考えるが、生理用ナプキンは高すぎる。それで自分なりに開発を始めるのだが、最大の敵となるのは、皮肉にも女性。この問題に男が首を突っ込むのは、タブーなのだ。普通ならそこであきらめるのだろうが、自分の問題でもないのに、蔑まれつつもがんばり続けるのが彼。真の男とはこういう男のこと!DVなどの深刻な問題に触れつつも、ミュージカル的要素も入った、楽しく、ポジティブで感動的な映画になっている。すべての人に見てほしい一作。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

おかしいと思ったら、自分で動くことを教えてくれる

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

主人公の言動も、映画の作りも、ひじょうに「誠実」。クライマックスのスピーチの場面に、その誠実さが凝縮されるので心が揺さぶられるのは間違いない。映画の長さや、挿入される歌とダンスといったインド映画の定則を守りつつ、インドはおろか世界の他国でも扱うのが難しい生理用品という題材を真正面から見据えた、作り手のチャレンジ精神に敬意を表したい。

周囲から奇異な目で見られようと、おかしいと思ったこと、誤っていると感じることがあれば、とにかく自分で何とかしようとする。このテーマが最後まで貫かれる点も気持ちよい。ただ主人公もテーマも、あまりにもブレがなく、まっすぐで誠実すぎるので、逆に共感しづらい側面もある。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

多様性を見据えつつ、ぬくもりを宿らせた快作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 夫は妻を救いたい一心で生理用品をつくるが、妻には生理のみならず、夫の行動さえも恥ずかしい。そんな男女の考え方の違いがドラマを面白く転がす。

 愛し合っていても、感情のすれ違いは彼らを別れさせ、そこに別の女性が介入。そしてその女性は生理をさほど恥ずかしいと思っていない。田舎の女性と都会の女性の物の見方の違いも興味深い。

 このような多様性を踏まえつつドラマチックな物語を紡ぎ出した点に、インド映画界の底力を痛感。ハラスメントの境界を探る上でも参考になる!? いずれにしても『マダム・イン・ニューヨーク』のガウリ・シンデー監督を妻に持つ演出家R.バールキの愛情が作らせたのは間違いない。温かい。

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山縣みどり

月経不浄が太古の考え方と思ったら大間違い!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

人類は女性の生理があってこその存在と声を大にしたくなる作品だ。文化的・宗教的な理由から月経期の女性を不浄とする旧弊な考え方がインドやネパールではまだ根強いようだし、生理についての論議はタブー。そんななか愛する妻のためにと生理用品の普及に尽力した男性がいたとは嬉しい驚きだし、ひとり『下町ロケット』的な発明・開発ものとしても見応えアリ。映画的なロマンスは余計に思えるが、実は主人公をめぐる女性二人の対比でインド国民の考え方の変化を表現しているのだ! それにしてもソーナム・カプールは輝いている。さすがはインド映画界が誇る美人女優だ。内容に敬遠しがちだろうけど、男性にこそ見てほしい。

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森 直人

ものづくりの無血革命と男性視点のフェミニズム

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

傑作。実話ベースの成功物語だが、実現までの壮絶さは憲兵からの拷問を受ける『まんぷく』の萬平さんにも負けていない。普通のおっさんが生理用ナプキンを自作し始めると、インド社会の慣習のタブーに露骨に触れて村がざわつき始める。主人公が保守的な価値観から徹底排除されるのが前半だが、それは新時代に移行する為の儀式にも見える。

後半はまるで21世紀版のキャプラ『スミス都へ行く』だ。利権よりも分配の精神、女性の社会的地位向上を説く演説シーン。この理想主義が爽やかに響くのは猛烈な過渡期にある現代インドならではだろう。『きっと、うまくいく』辺りからボリウッド娯楽映画は先端的な大衆思想の反映も注目点となった。

この短評にはネタバレを含んでいます
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