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太陽の塔 (2018):映画短評

太陽の塔 (2018)

2018年9月29日公開 112分

太陽の塔
(C) 2018 映画『太陽の塔』製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

清水 節

未来を見据えて立ち続ける生命の謎を解読する、ベラボーな意欲作

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 太陽の塔に込められた謎に肉薄し、岡本太郎のメッセージの核心に迫るベラボーに意欲的なドキュメンタリーだ。全9章、総勢29人の学者、批評家、学芸員、僧侶、クリエイター、アーティストらの言葉が、時にシンクロして文脈を生み出し、多面的な大きなひとつの論考が紡ぎ出されていく。縄文・沖縄・アイヌという起源。曼荼羅との関係性を探りチベットへと渡る飛躍。そして黒い太陽が暗示するもの。人類滅亡後もこの巨大彫刻/建築物は存在し、未来を見据えて立ち続けるという視点にまで拡がり、「宇宙観」が提示される。あたかも本作自体が、曼荼羅の様相を呈すのだ。のべ46時間になるという撮影素材をすべて鑑賞したい欲望にかられている。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

岡本太郎の脳内世界を疑似体験できる異色ドキュメンタリー

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 なかなか野心的なドキュメンタリーである。基本的には「太陽の塔」というモニュメントの芸術的な位置づけや、そこに秘められたメッセージを分析した知識人のインタービュー映像で構成されているのだが、まずその人選の幅広さに驚かされる。美術関係者はもとより考古学者や民俗学者、哲学者に建築家、さらには宗教家にダンサーなどなど。そんな多岐にわたる専門家たちが全方位的に「太陽の塔」の魅力を紐解き、そこに出てくるキーワードをビジュアル化したイメージ映像やフィクション映像を随所に散りばめることで、岡本太郎という偉大な芸術家の脳内世界まで疑似体験できるような仕掛けになっているのだ。これは面白い!

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「彼」は何を見ているのか、の徹底探究

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

近代以降の頽廃に突き立てた中指のように、万博を超えて進歩主義のぶっといアンチテーゼとして屹立し続ける太陽の塔。この未知の怪獣的モニュメントから全方位的に岡本太郎、思想家としての彼を取り囲もうとした意欲作で驚くほど見応えがある。国家(公的)事業と前衛芸術の転倒的な関係は『バンクシーを盗んだ男』にも通じるし、むろん『縄文にハマる人々』と繋げても面白い。

バタイユについて語ると爆発寸前に熱くなる西谷修先生など、語り手の面々も魅力的。監督の関根光才は続けて趣里主演『生きてるだけで、愛。』(これも力作)も公開されるが、共に人間のある種の獣性、システムを食い破る過剰な生命力を志向している点が興味深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
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