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私はあなたのニグロではない (2016):映画短評

私はあなたのニグロではない (2016)

2018年5月12日公開 93分

私はあなたのニグロではない

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

中山 治美

『マルクス・エンゲルス 』と合わせて鑑賞したい

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

監督は『マルクス・エンゲルス』のハイチ出身ラウル・ペック。共産党宣言の彼らを描いた後に黒人差別問題?と思ったが、確かに両作は繋がっていた。
同作のエンディングではボブ・デュランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」の曲と共に20世紀に起こった暴動やテロ事件などの映像が流れる。
若きマルクスらが目指した平等な社会という理想が砕けていくようで、泣けて仕方がなかった。その中には、本作に繋がる公民権運動の映像も。
本作は黒人差別史だけでなく、2作を通して広く差別や偏見が生まれる背景と、悲しくも育んでしまっている社会の構造をも読み解こうとする。
それを提示された我々はもう無自覚ではいられなくなるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

現代/映画の必携と言いたいサブテキスト

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

答えの浄化に飛び付くのではなく、問いの困難に踏み止まること――筆者が最近優れていると感じた作品の多くは、そんな姿勢と精神を共有している。ボールドウィンの未完の30pからバトンを受け継いだこの93分のドキュメンタリーは、切れ味鋭いタイトルを含め、いま必要な意見と認識を濃縮してまとめた小冊子のような一本だ。

監督のラウル・ペックは『マルクス・エンゲルス』と同様、エヴァース、マルコムX、キング牧師を「可能性」として歴史性(=ライク・ア・ローリング・ストーン)の中に置く。映画史も『駅馬車』等から「当人の自覚なし」部分を批評的に洗い直され、レイシズムも格差もLGBTも♯MeTooも同じ問題だと気付く。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

内側からの言葉ひとつひとつが、パワフルに突き刺さる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

軸となるのは、公民権活動家ジェームズ・ボールドウィンが書き終わらないままだった本。サミュエル・L・ジャクソンによる朗読に加え、ボールドウィンのテレビ出演や演説の映像も混ぜつつ、映画は彼の言葉でつづられていく。「黒人の子は、5歳くらいになるまで自分も白人と同じと思っていて、映画で白人がネイティブアメリカンと戦うシーンで白人の応援をする。だがやがて自分は反対の立場にいたのだと知る」「アメリカは(もはや奴隷として使えない)黒人をどうしていいのかわからないのだ」といった洞察が、今も続くこの問題の根深さを、内側から、痛烈に、正直に見せる。パワフルかつ重要な一作。

この短評にはネタバレを含んでいます
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