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リメンバー・ミー (2017):映画短評

リメンバー・ミー (2017)

2018年3月16日公開 105分

リメンバー・ミー
(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved. (C) 2018 Disney. All Rights Reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

ローカルな死生観に多様性の時代も感じさせる

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 メキシコの「死者の日」は以前から知っていたが、なるほど、日本の「お盆」とよく似ている。カトリックの万霊節と古代宗教が融合した風習とのことで、確かに異教的な土着性を見出すことが出来る。いかにも南米らしいカラフルな色彩に溢れた映像も美しい。
 家族から音楽を禁じられた少年が、「死者の日」の夜に死者の国へ迷い込み、そこで家族の秘められたルーツを知る。死後の世界が現世と隣り合わせに存在する、亡き人々を思い出すことで彼らの魂もまたそこで生き続けるという考え方にも、東洋的な宗教観と相通ずるものがあると言えよう。こういう死生観がディズニー映画で描かれることに、文化や価値観の多様化した今の時代を強く感じる。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

連綿と続く家族の絆が生きる力の源だとエモーショナルに謳う名作

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 死後の世界をモチーフとしたピクサーの意欲作は、マリーゴールドを基調に色鮮やかな祝祭空間と耳に残るラテン音楽で目と耳を楽しませ、王道のプロット運びで感情を揺さぶる。ここでは、人は2度死ぬ。誰にも思い出されなくなったときこそ、真の消滅が訪れるという世界観が切なくも現実的。アイロニカルな人生の真実を知り、信賞必罰を描く展開も豊か。人生の入口に立つ少年と、生の痕跡を伝えたいと願う出口を経た先達のコントラスト。自我とは何か。なぜ生きるのか。悩める若者は、御先祖様に背中をそっと押され、自らの道を確信して前へ進む。連綿と続く家族の絆こそ生きる力の源泉だとエモーショナルに謳い上げる名作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ディズニー/ピクサーの大霊界

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『アナ雪』チームが手掛けた主題歌は間違いなく、死者の国のダイナミックな色彩感もさすがの一言。そして、なによりラテン文化に対するリスペクトに胸アツ。メキシコでの記録的ヒットを飛ばしたのも納得だが、中盤に判明する真実など、ストーリー展開が読めてしまうあたりは、かなり惜しいところ。さらに、最終的に“音楽の力によって、家族の絆が強まりましたとさ”という流れも、いささか強引に見えてしまうなど、とにかく脚本の弱さが目立つ。それにしても、このノー天気キャラにして、ハットが特徴的なルックス。なぜ、主人公の相棒・ヘクター役の吹き替えに、ナオト・インティライミが起用されなかったのか、疑問が残るばかりだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

現世と地続きの死者の国がしっくりくる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 死者の国が、生者の国と同じように明るく、より派手。死者の性格は生前と変わらなず、彼らは里帰りもする。そんな感覚が、お盆にナスやキュウリで精霊馬を作って祖先をお迎えする日本人にはしっくりくる。
 メキシコの人々が、祖先の霊を偲ぶ祝祭"死者の日"を、派手な装飾と骸骨を飾って音楽を演奏して明るく楽しく祝う、その伝統的な死生観をカラフルな色と音楽で映像化。色彩は、実際に祝祭で使われるマリーゴールドの花びらの鮮やかなオレンジ色と、夜空の紺青色の対比が基調になっている。その夜空を、動物のような姿をした精霊たちが全身を輝かせながら舞うが、そこに美しい精霊だけでなく、キュートな精霊もいるのがいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

オレンジ色に陶酔し、涙腺決壊のラストへ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ここ数年のディズニー/ピクサー作品はシリーズものが目立っていただけに、今作のオリジナリティにまっすぐに感動する。人間の日常を超えた世界という、ピクサーの精神が満点なうえに、知らず知らず観客の心を捉えてしまうマジックは、もはや伝統芸の域か。予想していたように物語が進むのに、気がついたら涙腺が決壊……という化学反応に身を任せてしまった。
ストーリーや演出に、やや甘さを感じる人もいるかもしれない。しかしこの作品が評価されるべき点は、ライティングの超絶技巧だろう。現実世界でのロウソクの光から、死者の国へ向かう橋に舞う花びらまで、オレンジ色の光の魔力的な美しさが黄泉の世界に誘われる快感を導く。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

しっかり泣かせてくれる、メキシコへのラブレター

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 自分には夢があるのに家族に反対されて、というのは、よくある設定。だが、そこに死後の世界や祖先の秘密などの要素が混じってきて、ストーリーは思いもかけなかった方向に展開。原題(『Coco』)の意味も次第に明らかになり、最後はしっかりと泣かせてくれる。メキシコらしくいつも以上にカラフルなビジュアルと、音楽も大きな魅力。音楽は、もっとたくさん入れてほしかったと思うほど。英語版の声のキャストはガエル・ガルシア・ベルナルやベンジャミン・ブラットなど全員メキシコ人かラティーノ系だ。偶然のタイミングとはいえ、トランプが差別的発言をする今、彼らへのラブレターのような映画がついに登場したことを祝福したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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