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実写『ゴールデンカムイ』白石役・矢本悠馬、原作モノで得た自信が支え ファンを納得させる熱演の裏側

これまでにも、実写化作品で魅力的なキャラクターを演じてきた矢本悠馬
これまでにも、実写化作品で魅力的なキャラクターを演じてきた矢本悠馬

 野田サトルの大ヒット漫画を実写映画化した『ゴールデンカムイ』(全国公開中)で、原作屈指の愛されキャラ、白石由竹を演じた俳優・矢本悠馬が、漫画ファンとして実写化作品の人物を演じる際の心がけや、愛すべきキャラクターに挑んだ思いを語った。

強者たちが集結!実写版『ゴールデンカムイ』場面写真(18点)

 『ゴールデンカムイ』は、日露戦争終結直後の北海道を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡る争奪戦を描くサバイバルアクション。“不死身の杉元”と呼ばれる戦争の英雄・杉元佐一(山崎賢人)とアイヌの少女・アシリパ(山田杏奈)が、24人の脱獄囚に刻まれた、金塊の在りかを示す「刺青人皮(いれずみにんぴ)」を求め、元囚人や歴戦の戦士たちと渡り合う。

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 脱獄囚の1人である白石由竹は、“脱獄王”の異名を持つ脱走の天才。ギャンブルと女性に目がないお調子者で、天性のいじられキャラっぷりも相まって、コメディーリリーフとして物語を支える。原作の大ファンである矢本にとっても“推しキャラ”だったというが、撮影当初はプレッシャーから「ガチガチだった」と振り返る。

 「久保(茂昭)監督に最初から『お任せします。本当に頼りにしてます』という感じで言っていただけたことで、その期待を超えてなくてはいけない、これは外せないと考えてしまい、2、3日はガチガチでした。周りのキャラが、実写になったことでより渋くなっていたこともあって、『大丈夫かな、芝居のチューニングを間違えてないかな』と不安になってしまうこともありましたね」

 そんな矢本を救ったのが、他ならぬ原作の存在だった。「やっぱりヒントは原作のなかにしかないと思って、もう一度原作を読み直したんです。それで気がついたのが、白石って、いい意味で適当人間だということでした。ダサいことはしないけど、自分の人生を使って楽しく生きられればいいと考えている。そこで『そうか、ガチガチになりすぎてた。せっかく白石を演じてるんだから、楽しまなきゃダメじゃん』みたいに思えたんです」

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 さらに、これまで映画『ちはやふる』の西田役や、ドラマ「今日から俺は!!」の谷川役など、数々の実写化作品で高い評価を受けてきたことも自信につながった。「今までいろんな漫画原作をやってきて、自信ついてたじゃん、みたいな(笑)。その作品のファンの方たちを納得させてきたんだから、自分の解釈は間違っていないと。そうした今までのキャリアと、白石の自由で楽しく生きる姿を思い出し、とにかくやりまくってやろうという感じで吹っ切れました。その瞬間、白石が自分に入ってきたというか、しっくりき始めたんです」

実写化で一番大事なこと

白石といえば! なポーズにも注目(C) 野田サトル/集英社 (C) 2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

 そんな矢本は、漫画原作のキャラクターを演じる上で「一番大事なのは、キャラクターが持っている精神性だと思います」と言い切る。「その人物のしゃべり方とか所作を拾うだけだと、ただのモノマネになってしまう気がするんです。キャラクターの心を投影するというわけじゃないですが、憑依させていかないと、どこか偽物っぽくなってしまうと考えているので、外側よりも中身、心を大事にしたい。それはどの作品でも同じですね」

 「見た目に関しては、近づけられる作品もあればそうじゃない作品もありますし、ビジュアルに対する批判って必ずある。そこを動きや表現だけで覆すのは無理だと思うんです。だからこそ、中身を大事にしなくてはならない。『ゴールデンカムイ』でも、立派な志があるわけではない白石が、埋蔵金争奪戦に参加する理由は何なのか。いったいどういう人物で何を考えているのかを分析して、それをヒントにしていきました。過去の実写化作品で評価をしていただいたのは、僕と同じように原作を読んでくださった方が多かったからでは。読者の方も、僕と同じようにキャラの心を感じてくださったからではないかと思っています」

 劇中では、原作ファンお馴染みのポーズも披露しているが「実写でやるのは結構難しかったです。あれって白石にとっては癖のひとつだと思うので、それをどうにかして芝居の中に落とし込みたかった。漫画を読みながら、どういう時に指を立てたり向けたりするんだろうっていうのを徹底的に考えました。僕がやりたいという気持ちが先行しないように、白石として気持ちがリンクしたら出すんだという感覚でした」とこだわりを明かした。

2回のために肉体改造!ヌルヌルシーンの裏側

 そんな白石の見せ場のひとつが、囚われの杉元を助けるため、ふんどし一丁で油まみれになり、監禁場所に潜り込む“ヌルヌルシーン”。全身のテカリ具合といい、どこか妖怪じみた動きといい、原作のテイストを見事に再現している。

 「あそこは実に漫画的というか、実写では再現できない動きなので、どうやってリアリティを持たせようかとか、窓からぬるっとナメクジみたいに出てくるようにしようか、という話を監督としていました。あまり(面白さの)鮮度を落としたくないということで、実は2回ぐらいで撮ったシーンなんです。全身にローションを塗るんですが、最初は刺青との相性が悪くて取れてしまい、刺青を入れ直して2回で決まった感じ。でも、ジムには半年くらい通いました、ヌルヌルの日に向けて(笑)」

 さらに「あの撮影は雪山のロケより寒かったかもしれません。体中に塗ったローションが冷えていくんですが、水と違って流れ落ちないんです。スタジオ内もキンキンの状態なのに、僕はふんどしだけ。サウナのような場所を用意していただいたので、出番の時以外はそこにいました」と明かした矢本。それだけに渾身のシーンになったようで「試写では、大きな声で笑ってくれる方も多かったので、結構面白いシーンになったかな」と満足げに語る。

魅力的なキャラクターに必要なもの

何より「その作品を盛り上げようという気持ち」が必要だと語る矢本悠馬

 主人公・杉元とアシリパの冒険を支える、重要なキャラクターとなる白石。これまでにも、観客の心に残る魅力的な脇役を演じてきた矢本は「脇役って、まずは主役を格好良く見せることが大事だと思います」と語る。「脇役をやる時って、いいパサーになる必要があると思っています。主演の方はみんなの意見や演技を受け止めなくてはいけないので、こっちはいいパスを出す必要がある。あとは、絶対にその作品を盛り上げようという気持ちがないと厳しいですよね」

 山崎と山田との相性もバッチリだったようで「僕の撮影初日がラストの方のシーンで、最初はとまどっていたのですが、2人はいくつかのシーンを撮影していたこともあり、セリフのやり取り自体は全くストレスがなく、すごく安心感があるというか、やりやすかったです」という矢本。今後、続編の制作も期待される本作だけに、矢本も白石のさらなる活躍に意欲を見せる。「映画ではまだ描き切れていませんが、原作ではこの先、もっと3人のテンポとリズムがかみ合って旅をしていくので、(続編があれば)僕も白石として、杉元とアシリパのために頑張りたいですね」(編集部・入倉功一)

(山崎賢人の「崎」は「たつさき」/アシリパの「リ」は小文字が正式表記)

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