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『シティーハンター』神谷明、レジェンド声優の自覚と感謝 追い続ける“先輩”の背中

「今では僕が誰かに元気を与える側になっているのかな?」神谷明
「今では僕が誰かに元気を与える側になっているのかな?」神谷明

 1987年にテレビアニメ「シティーハンター」シリーズの放送がスタートしてから、36年以上にわたって主人公の冴羽リョウを演じ続けている声優の神谷明。76歳となった今も「自分を磨き続けていきたい」という神谷が、最新作にして最終章の幕開けとなる『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(9月8日全国公開)の公開を前に、リョウとの出会いをはじめ、声優人生の“これまで”と“これから”を語った。(取材・文:成田おり枝)

【動画】冴羽リョウを語る!『劇場版シティーハンター』神谷明インタビュー

僕にしかできない! 40代で出会った冴羽リョウ

(C) 北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

 漫画家・北条司による原作をアニメ化した本シリーズ。無類の女好きで、裏社会ナンバーワンの実力を持つ始末屋(スイーパー)・冴羽リョウと、パートナーである槇村香の活躍を描く物語だ。「キン肉マン」や「北斗の拳」など数々の作品でヒーローを演じてきた神谷だが、「シティーハンターでリョウと出会った1987年頃、僕はちょうどこのようなキャラクターに出会いたいと思っていた」と、シリアスとギャグを自由に行き来するリョウに惚れ込んだという。

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 「僕は53年ほど前に劇団テアトル・エコーに入団したんですが、上演作品の稽古場で先輩の山田康雄さんのコロコロと変化するすばらしい演技を目の当たりにしていました。『いつか、山田さんのように演じられるようになりたい』とずっと思っていたんです」と憧れの先輩の存在を口にし、「『週刊少年ジャンプ」で連載中の『シティーハンター』を拝見した時には、『絶対にリョウをやりたい!』『この役は僕にしかできない』と図々しくも思ったんですね。そこでオーディションに参加し、受かることができました。リョウと出会った頃、僕は40代です。もしそれより数年前に出会っていたとしても、きっと納得いくように演じることはできなかったでしょう。できるようになった時に『シティーハンター』に出会えて、本当にラッキーだなと思っています」と振り返る。

(C) 北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

 リョウの魅力について「二枚目でありつつ、やさしくてひょうきんで、エッチなところもリョウの魅力。『もっこり!』と言って、それがいやらしさを感じるものだったとしたら女性ファンは付かなかったと思いますが、いいところで香がハンマーを持ってきてくれるので」と楽しそうに語る神谷。「そういった振り幅のあるキャラクターなので、演じる上では僕が持っているものをすべて注ぎ込みました。歯の浮くようなカッコいいセリフも思い切り言わせてもらえて、うれしかったですね。自分の人生の中で絶対こんなことは言わないだろうというようなことを、たくさんリョウちゃんを通して言うことができた。たまらなかったですよ」

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レギュラー声優もパワーアップ!

(C) 北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

 2019年には、テレビアニメシリーズから約20年ぶりの復活となった『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』が公開。映画の大ヒットにより、リョウが多くのファンの心に生き続けていたこと、新たなファンを生み出す存在であることが証明された。最新作となる『天使の涙(エンジェルダスト)』では、リョウの原点に触れる物語が展開。原作においてもクライマックスの重要キャラクターとなった、リョウの育ての親・海原神が登場する。

 神谷は「こだま兼嗣総監督は、『<新宿プライベート・アイズ>』の次を作るのならば、そこに踏み込まなければいけないと思っていたそうです。脚本を読んだらすごく上手な踏み込み方をしていて、驚きました」と感心しきり。時代の移り変わりもしっかりと反映され、「リョウがマッチングアプリまで使い出すとは! 上手に使いこなしていたので、コイツ! と思いましたね(笑)。時代に合わせてくれる作品だと思っています」と印象を語りつつ、「声を吹き込む前にいただいた資料映像には、すでに画も、TM NETWORK の曲も入っていました。すべてがすばらしくて、泣きそうになってしまって。『絶対に皆さんの期待以上の演技をしよう』と思いました」と意気込みを明かす。

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 「ジェットコースターに乗っているよう」とドラマ性とギャグ、アクションを兼ね備えた本作を表現した神谷だが、パワー全開のリョウを演じる上では「相当エネルギーを使っていたと思います」とも。「『アフレコはじっくり時間をかけてやりたい』『セリフで絡む皆さんとは、一緒に録らせてほしい』とお願いしました」

 「30数年前の作品でレギュラーメンバーが現役でそろっているものって、少ないと思うんです。レギュラー声優の皆さんは前作よりもパワーアップしている。びっくりしましたよ! 槇村役の田中秀幸さんや、美樹役の小山茉美さんとも久しぶりにお会いできて、ものすごくうれしかった。海坊主役の玄田哲章さんとは仕事場で、冴子役の一龍斎春水さんとは彼女の講談の会でお目にかかっています。そして、香役の伊倉一恵さんとは芝居を観に行くこともあるんですよ。みなさんとにかく元気で、それが僕のパワーの源の一つですね。今回改めて『みなさんと一緒につくっている作品なんだな』と思いました」。

エネルギーの源は?「まだまだ自分を磨き続けていきたい」

(C) 北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

 現在76歳となった神谷にとって、もう一つ大きなエネルギーの源となっている存在が、86歳にしてバリバリ現役の声優・野沢雅子だという。「デビューの時から野沢さんの背中を見て、ずっと追いかけてきています」と切り出した神谷は、「スタジオに行く道すがら、時々お会いしたりするんです。『明くん! マコ(野沢)さん!』って、もう、うれしくてね。テレビに映っているマコさんを見たり、仲間から『マコさん、今日も元気だった』と聞くと、元気が出てきます」とにっこり。

 さらに「僕は『フォー・シーズンズ』のボーカルのフランキー・ヴァリさんが大好きで。現在は89歳になったヴァリさんですが、まだまだ現役で歌っているんですよ! ものすごく元気をいただいている」そうだが、変わらずにリョウを演じ続けている神谷の存在も、たくさんの人々を励ましているはずだ。神谷は「マネージャーに『もしかしたら、今では僕が誰かに元気を与える側になっているのかな?』と聞いたら、『そうですよ』って(笑)。そういう存在になれているとするならば、頑張らなきゃなと思っています」と意欲旺盛だ。

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 1970年の声優デビューから、50年以上。今もなお現役で走り続けている神谷。「こんな人生が待っているとは思いませんでした。人、作品、時代に恵まれていなければ、ここまで来ることはできなかった。自分の幸運に感謝するばかりです」とこれまでの歩みを振り返る。

 「長く続けられたコツというものは何もなくて、与えられた役を一生懸命にやっているうちにここまで来ることができた。たとえば『まだリョウを演じたい』と思ったとしても、次のステージがなければそれはかないません。『演じたい』と『演じられる』は別物なんですね。つまり、仕事を与えてくださった皆さんのおかげで、ここまで来られたんです。ただそれに対して、商品価値をずっと持ち続けてきた自分がいるようにも思っています。だからこそこれからも使ってもらえるように、まだまだ自分を磨き続けていきたいです」と未来を見つめる。レジェンドと言われる神谷明からは、感謝の気持ちと情熱があふれだしていた。

神谷明が語る冴羽リョウとの出会い『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』インタビュー » 動画の詳細
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