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永瀬正敏、井浦新、佐藤浩市ら出演の『赤い雪』オリジナル脚本が彼らを魅了

甲斐さやか監督と菜葉菜
甲斐さやか監督と菜葉菜

 佐藤浩市永瀬正敏ら映画『64-ロクヨン-』のキャストが集結した映画『赤い雪 RED SNOW』が25日に大分県由布市湯布院公民館で開催された第43回湯布院映画祭で上映、新鋭・甲斐さやか監督の美意識が炸裂する独特の世界観を受けて、辛口で知られる湯布院の観客たちからも活発な議論が飛び出した。

【写真】佐藤浩市主演『64-ロクヨン-前編』

 山形国際ムービーフェスティバルで準グランプリを獲得するなど、短編『オンディーヌの呪い』が高い評価を受けた甲斐監督の長編デビュー作となる本作。『ヘヴンズ ストーリー』『64-ロクヨン-』『菊とギロチン』の浅野博貴プロデューサーが甲斐監督の才能にほれ込み、オリジナル脚本による長編映画デビューが実現した。

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 一面の雪景色の中、ひとりの少年が失踪する。容疑者として名前があがっていた女は完全黙秘を続け、真実は闇に葬られる。そして少年の兄は、そのトラウマにとらわれて大人になった。それから30年後、事件を追う記者が現れることで、被害者の兄と容疑者の娘が顔を合わせることになる。二人の記憶が結びつけられる時、狂気のドラマが幕を開ける……という内容となっている。

 メインキャストには、永瀬正敏、菜葉菜井浦新夏川結衣、佐藤浩市など、新人監督のオリジナル脚本作品としては異例ともいうべき豪華な俳優が集結した。浅野プロデューサーは「やはり皆さん良くない脚本の映画には出ないという方ばかり。そういう意味で脚本は大きかった」と解説すると、容疑者の娘を演じた主演の菜葉菜も「難しそうだなとは思いましたが、この脚本を読んだ時の衝撃と、早百合という役を絶対にやりたいという気持ちと両方ありました」と振り返る。その他、本作が映画初出演となるイモトアヤコのキャスティングも話題になりそうだ。

 幻想的、かつ難解な作風で知られるアンドレイ・タルコフスキーミケランジェロ・アントニオーニの映画が好きだと語る通り、甲斐監督が描き出す世界は、記憶の曖昧さを観客に投げかけ、説明的な描写を徹底的に排除。かつ過去と現在の時系列が入り組んだソリッドな物語展開が特徴。さらに山形の雪景色の中での撮影を敢行し、雪の白と血を連想させる赤とのコントラストを実現させるなど、独特の世界観を醸し出している。

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湯布院映画祭

 そんな甲斐監督に向けて、一人の観客から「新人監督ならもっと単純明快でわかりやすい、ストレートなドラマを撮るべきでは?」という問題提起が出されると会場はヒートアップ。「むしろわかりやすく説明されている映画だ」「確かに映画はわかりやすい方がいい」「ヨーロッパ映画ならこういう映画はよくある」「わたしはこの世界観は好きです」「佐藤浩市をはじめとした役者の演技は見応えがある」「わからないと投げ出すのではなく、観客の方からも歩み寄るべきでは?」等々、喧々諤々の議論が繰り広げられた。

 そんな様子を見た菜葉菜は、「ひとつの作品でたくさんの人が討論したり、言い合える作品に関わることができて幸せだなと思いました。映画っていいですね」と笑顔。甲斐監督も「わたしたちは映像ならではの表現に挑戦しようと思いました。もちろん最初から観客に届けるということは諦めていません。意見は分かれるだろうなと思っていましたが、この作品を喜んでくれる人はいるだろうと信じて作りました。これからもこういう作品が作られてほしいと思うし、また懲りずに挑戦したいと思います」と決意を語った。(取材・文:壬生智裕)

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