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福島の問題はまだ終わっていない…廣木隆一監督が熱弁

廣木隆一監督
廣木隆一監督

 東日本大震災で家族や家など大事なものをなくし、喪失感の中で生きているひとりの女性を主人公に据えた映画『彼女の人生は間違いじゃない』が第22回釜山国際映画祭13日に上映され、廣木隆一監督、瀧内公美高良健吾が上映会場でQ&Aを行い、廣木監督は福島の現在について熱い思いをのぞかせた。

【画像】高良健吾も熱く語る…イベントショット

 福島出身である廣木監督は「地震が起こり、原発が爆発してから福島に行ってきました。僕が育った海水浴場は盛り土がされてまっ平らになり、まるで何もなかったようにしていたことに衝撃を受けました。そんな福島の現状を見て自分の中で整理がつくまで5年かかり、まずは小説を発表してから映画を撮りました」と映画を撮った理由を観客に説明。

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 Q&Aでは観客から「なぜヒロインのみゆきの職業を市役所勤めの公務員にしたのか?」と言う質問が飛ぶと、廣木監督は「皆が同じような仕事をして同じように見える。そんな場所に主人公を置こうと考えました」と回答。加えて「僕は普通の人に興味があり、どんな暮らしをしてどんな生活をしているのか気になるんです」と話す。

左から廣木隆一監督、瀧内公美、高良健吾

 また観客から、「震災後の喪失感の中で何かが変わるかもしれないと予感を感じさせる結末。ハッピーエンドなのでは?」という疑問が寄せられると、廣木監督が「僕の中で終わっていません。福島はまだ、To be continueなんです」ときっぱり。主演の滝内も「わたしも監督と同じ考えです。映画の撮影のために福島に行きましたが、時間は進んでも実際は止まっていると感じたことが多かったんです。ですから、ハッピーエンドではなく現状がこれからも続いていくと思います」と自身の解釈を述べる。それに続くように高良も「津波によって傷ついた人々が幸せになってほしいと願っています。僕は映画を撮っていて、結果よりもその過程が好きです。この映画もみゆきの人生の過程なんだと考えています」と自分なりの考えを明かしていた。

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 廣木監督は「観客の皆さんは観ていてつらい映画だと思います。被害に遭われた方がただかわいそうと感じるよりは、映画を通じて喪失した場所、喪失した人がいることを感じてほしい」とも訴える。

 瀧内は「日本はアニメや漫画が全盛で、このような映画を作るのは難しいのが現状です。それでも映画を通じて世界に発信することにやりがいを感じています」とコメント。高良も「僕自身、ここ1年くらいの間に震災関連の作品に出演することが多くて、そのときの状況をこうして映画で残すのは大事なことだと思います。この映画を通じて未来の人に過去の出来事を知ってほしいし、今日こうして釜山で上映できたことをうれしく思います」と10年ぶりとなる釜山国際映画祭に尊敬する廣木作品で凱旋できたことへの喜びもうかがわせていた。(取材・文:土田真樹)

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