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アカデミー賞作品賞『ムーンライト』若手監督が明かす日本の名匠が当てた光

37歳でアカデミー賞作品賞を獲得したバリー・ジェンキンス監督
37歳でアカデミー賞作品賞を獲得したバリー・ジェンキンス監督 - 写真:細谷佳史

 第89回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞に輝いた映画『ムーンライト』は、マイアミの貧民街に住むゲイの黒人男性の成長物語だ。監督、脚本家、主要キャストは黒人で、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニングまたはクィアの頭文字をあわせたセクシャルマイノリティーの呼称)のキャラクターを主人公にした映画が作品賞を獲得したのはオスカー史上初の快挙。監督2本目にして多くの映画人が持つ夢を実現してしまった37歳のバリー・ジェンキンス監督が、オスカー授賞式での大ドンデン返しの瞬間や作品への思いについて語った。

【写真】美しい映像表現『ムーンライト』フォトギャラリー

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誰もが驚いた衝撃の瞬間。Winter / Getty Images

 作品賞の発表時、手違いから『ラ・ラ・ランド』の名前が呼ばれた瞬間について「『ラ・ラ・ランド』はすでに多くの賞を受賞していたから、べつに特別なことではなかった」と振り返った監督。「でも、作品賞が入れ替わった瞬間は、まさに超現実的な体験だった。あれは複雑な感情だったね。実は、その瞬間のことはあまり覚えてない。この2本の映画は全く違っていながら、どちらも若い監督と若いプロデューサーによる作品という面がとても似ている。僕が覚えているのは、新しい世代のストーリーテラーたちが、とても潔くあの舞台をシェアしていたことだけだ。それは美しい瞬間だったね」。

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 『ムーンライト』は、『グローリー/明日への行進』や『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、アカデミー賞作品賞に輝いた『それでも夜は明ける』など、質の高い作品を次から次へと送り出すブラッド・ピットの製作会社プランBエンターテインメントの作品。プロデューサーであるブラッドの作品選びのセンスの良さには実に驚かされる。監督も、ブラッドのチームとのコラボレーションを大いに楽しんだようだ。

 「ブラッドに初めて会ったのは、『それでも夜は明ける』のプレミアだった。彼は、単に大スターでいるだけでは落ち着かないんだ。持っている多くのパワーを使って他のアーティストたちが作品を作りやすい環境を生み出す。彼らが僕に、映画をどう作るか、キャスティングはどうするか、といった口出しをすることはほとんどなかった。僕が自分の作品を作れるように守ってくれたんだ」。

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詩的な映像表現と演出にも注目。(C) 2016 A24 Distribution, LLC

 そんな本作を魅力的にしているのは、映像と音楽が織りなす詩的な表現にあふれた演出だ。黒澤明ウォン・カーウァイなど、多くのアジア映画に影響を受けてきたという監督は、『ムーンライト』に強く影響を与えた一本の日本映画として大島渚の『御法度』を挙げた。「『御法度』はこの作品に直接影響を与えた。実際、『ムーンライト』の編集中にあの作品の坂本龍一のスコアを仮の音楽として使っていたんだ」。

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 そんな並みならぬ思いのある日本の観客に向けたメッセージとして監督は、以下のように語った。「この映画は本質的に人間についてのものだ。僕らは他の人たちがどう感じるかとか、自分が受け入れてもらえないつらさを感じることができる。僕は多くのアジア映画を観てきた。特に日本映画をね。日本に行ったことはないし、育った環境もかなり違うけど、日本の作品に自分自身を重ねることができたんだ。だから『ムーンライト』が、日本の観客にとって、同じような作品になることを期待しているよ」。(細谷佳史)

映画『ムーンライト』は全国公開中

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