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ジブリの血を受け継ぐ新作アニメに宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫の反応は?

米林監督、ジブリ退社後初の新作『メアリと魔女の花』
米林監督、ジブリ退社後初の新作『メアリと魔女の花』 - (C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

 スタジオジブリ出身の米林宏昌監督の新作アニメ映画『メアリと魔女の花』制作発表記者会見が15日、日比谷の東宝本社で行われ、米林監督、プロデューサーの西村義明がジブリ解散後、いかにして本作制作に向き合ったかを語った。

【写真】ジブリ退社後初!『メアリと魔女の花』製作発表記者会見

 1971年に書かれたイギリスの女流作家メアリー・スチュアートの児童文学(原題:The Little Bloomstick)に基づき、11歳の少女メアリの冒険を描いた本作。2人が映画制作を決意したのは、『思い出のマーニー』(2014)の打ち上げ後。ジブリ解散後の進路について、西村が「麻呂さん(米林監督の愛称)、もう一本映画をつくりたいですか?」と質問したことがきっかけだった。普段は思慮深い米林監督だが、その時ばかりは「もう一本つくりたい」と即答。そうしてこの企画はスタートしたという。

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メアリと魔女の花
米林宏昌&西村義明プロデューサー

 スタジオジブリでは宮崎駿高畑勲鈴木敏夫の3人が企画を決めてきたが、今回は初めて2人で企画を考えたという。「だから企画は行ったり来たりだったし、ある時は口論することもあった。これは監督には失礼な話だが、ハローワークに行ったこともある。結局は応募しなかったけど、世の中にはいろんな仕事があるんだなと思った。でもハローワークに行った当日に『かぐや姫の物語』(2013)がアカデミー賞にノミネートされ、それが転機となった」と述懐する西村。

 そこでアニメ制作に情熱を傾けるクリエーターたちと接し、彼らが持つ「子どもたちが初めて観る映画であるアニメーションを作る者の責任」に触れた西村。そしてその哲学はスタジオジブリもそうであったとあらためて気付いたという。「そんな彼らの志を誰が受け継ぐんだろうと思ったら焦りが出てきた。そこでホテルに戻って自分たちのスタジオをつくろうと決意した」と振り返る。

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 帰国後、「今後どうなるかわかりませんが、やっぱり米林監督とつくりたいのはジブリの血を受け継いだ映画だ」と米林監督に告げた西村。米林監督も「困難はあるが、やるかやらないかだったら、やるために苦労していこうと思った。だから西村さんが新会社をつくると聞いて大賛成しました。僕たちがジブリで制作していたものを新しくつくるなら、ゼロから、志をもって作った方が自分たちの作りたいモノをつくれるんじゃないかと思ったんです」と付け加えた。

 そして長編アニメ制作を決意した2人は宮崎駿に報告するために彼のアトリエを訪れたという。最初はコーヒーを淹れて好意的に迎えてくれた宮崎だったが、長編をやると聞くやいなや顔色がパッと変わり、「だったらこんなところに来るな。覚悟を持ってやれ」と追い返されたという。とは言いながらも、後日、宮崎は「頑張ってつくる」という米林監督の決意を聞いて「うれしい」と語っていたそうで、「逆にプレッシャーに感じました。宮崎さんにうれしいと思ってもらえる作品をつくらないと」と米林監督は気合いを入れ直す。

 また、鈴木敏夫に報告した際には「今までは何でも鈴木さんに相談してやってきましたが、今回は脚本もコンテもコピーも見せなかった」という西村。「相談すれば鈴木さんはきっと正解を言ってくれるだろう。だけど今回は、僕らを応援してくれる宣伝チームもいる。そこの中心にいる僕が、鈴木さんの言葉に揺らいだらおかしくなる。だから相談しません。と言ったら、『それはいい。と長編アニメを作るなら覚悟を持ってやれ』と。くしくも宮崎さんと同じ事を言われました」と付け加えた。

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 さらに高畑勲には新スタジオ設立については話をしなかったものの、別件で喫茶店に打ち合わせをしているときに「どんな企画か教えてください」と言われたという。「これは本当に怖い言葉で」と笑う西村は「高畑さんの嫌いなファンタジー作品ですから。でも企画の骨子を説明したら、『面白いな。その映画の話を聞く限り、僕と宮さんが『NEMO ニモ』(1989)という映画でやろうとして実現できなかったことを君たちがやろうとしている』とおっしゃったんですよね」と明かす。

 スタジオジブリの遺伝子を受け継ぎつつも、新たな地平へと進み始めた2人。「僕らはジブリの血を受け継いでいるのは間違いない」と語った西村は「今度の作品は米林監督のジブリ人生をすべて注ぎ込む作品になるので、楽しみにしてもらいたいと思います」と観客の期待をあおった。(取材・文:壬生智裕)

『メアリと魔女の花』は2017年夏、全国東宝系にて公開

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