ADVERTISEMENT

マーベル新作『シャン・チー』入門!原作コミックで見る新ヒーローの歴史

 マーベルが誇るアクションヒーロー、シャン・チーを主人公にした新作映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)待望の新ヒーローが誕生する一方で、中には「シャン・チーってどんなヒーロー?」と疑問を抱く方も多いはず。ここでは、原作コミックにおけるシャン・チーの歴史をおさらいすると共に、MCUでの活躍が期待されるキャラクターの魅力を紹介します。(文:杉山すぴ豊)

原作コミックにおけるシャン・チーの歴史

 シャン・チーは、1973年に「Special Marvel Edition」第15号でデビュー。とはいえ、この雑誌は彼の物語しか掲載しておらず、後に「The Hands of Shang-Chi: Master of Kung Fu」とタイトルを変えます。Kung Fu(カンフー)という言葉からもわかるとおり、当時としては珍しいマーシャルアーツ(格闘技)を使うヒーローでした。

 このユニークなヒーローが生まれた経緯は2つあります。1つは1970年代当時、アメリカで香港産のカンフー映画ブームが起こったこと。この余波を受け、「燃えよ!カンフー」(1972~1975)というアメリカ製のテレビドラマまで作られるぐらいでした。マーベルも、このトレンドをコミックに取り入れていたのです。初期のシャン・チーのコミックには MARTIAL-ARTS ACTION — AS ONLY MIGHTY MARVEL CAN PRESENT IT!(無敵のマーベルだけがお届けできる、マーシャル・アーツ・アクション!)というあおり文句が並びます。なお、シャン・チーがコミックデビューを果たした1973年は、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』が封切られた年ですから、コミック界と映画界にカンフーヒーローが登場したということになります。

ADVERTISEMENT

 もう1つの理由は、1970年に出版されたコミック「コナン・ザ・バーバリアン」の成功。コナンはもともと、1930年代に出版された冒険小説が原作で、マーベルが権利を手に入れコミック化しました。どうやら、当時のマーベルは昔の小説のヒーローやヴィランのコミック化を試みていたようで、同じく権利を手に入れた1910年代の犯罪スリラー小説のキャラクター、フー・マンチュー博士をコミックに登場させようとしたのです。フー・マンチュー博士というのは東洋人のヴィランです。

 そこでマーベルは、悪のフー・マンチューの息子がシャン・チーであり、シャン・チーは父の悪行を知り父の軍団と戦うという物語を作り上げました。後にフー・マンチューを使用する権利をマーベルが失ったため、この名前はコミックで使われなくなりますが、父親がヴィランであり、自分の肉体を使って戦うヒーローという設定は残りました。その後、スパイダーマンと共闘したり(スパイダーマンに武術を教えたこともありました)、またアベンジャーズのメンバーとして活躍したことがあります。

父と子の物語を踏襲!MCUでのシャン・チー

 MCUにいつかシャン・チーが登場するとは思っていましたが、他のMCU映画やドラマシリーズでデビューという形ではなく、いきなりの主役大抜てきに少しビックリしました。あのブラック・ウィドウですら、単独映画になるまで10年かかっていますから(笑)。

 しかし、これはよく考えられたデビューだと思います。まずシャン・チーの戦い方は他のヒーローたちとは一味違います。超能力やハイテク兵器を使うわけではない。したがって、MCUに新しいタイプのアクション映画が誕生すると言えるでしょう。またシャン・チーがアジア系のヒーローであるということも新味。MCUは黒人ヒーローのブラック・パンサー、女性ヒーローのキャプテン・マーベル、Z世代ヒーローのスパイダーマンとダイバーシティー(多様性)を意識しています。そう考えると、今回のシャン・チーのMCUデビューもうなずけますね。

 さらに、シャン・チーが『シャン・チー/テン・リングスの伝説』というタイトルで映画化されるのもポイント。テン・リングスとは『アイアンマン』1作目に登場した悪の組織の名称。コミックに登場するスーパーヴィラン、マンダリン(指に10個のリングをはめている)に由来しています。MCUでは『アイアンマン3』ぶりに、マンダリンやテン・リングスが再登場するわけです。予告を観る限り、テン・リングスの首領がシャン・チーの父親のようですから、元のコミックの設定にあった父親がヴィランがここで見事に活きてくるわけです。考えてみればMCUにおいて、父と戦うヒーローは多い。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のスター・ロードとエゴ、サノスとガモーラ、ネビュラの関係、父の過ちを正そうとする『ブラックパンサー』。MCU王道の“父と子”の物語をシャン・チーは踏襲しているのです。

 そして本作はMCUのフェイズ4の立ち上げを担う作品です。映画においては『ブラック・ウィドウ』からフェイズ4が始まるわけですが、その後は『シャン・チー』と『エターナルズ』(パンデミック前は『エターナルズ』の公開が先というスケジュールでした)が控えています。つまり、フェイズ3で人気が出たヒーローたちの続編ではなく、今までのMCUに登場しなかった新ヒーローをフィーチャーしている。これはMCUが新たなステージに向かうことの意志表明なのでしょう。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は9月3日全国公開

(C) Marvel Studios 2021

ADVERTISEMENT

杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)プロフィール

アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、東京コミコン等のイベントで発信。現在「スクリーン」「ヤングアニマル嵐」でアメコミ映画の連載あり。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT