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6歳の弟が消えた…狂気の真相とは?

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赤い雪
永瀬正敏と 菜 葉 菜

 あの雪の日、記憶からも現実からも6歳の弟は消えたーー。本格ミステリーにして濃厚な緊張感を織り込むサスペンス映画『赤い雪 Red Snow』が2月に公開される。雪に閉ざされた村で起きた少年の失踪事件。その30年後、事件を追う記者が容疑者の娘を見つけたことから、事件を巡る人間たちの荒涼としたドラマが再び動き始める。そこに見え隠れする狂気の予感……。失踪した少年の兄・白川一希役の永瀬正敏と容疑者の娘・江藤早百合役の 菜 葉 菜 が、この物語に塗りこめられた謎と狂気を語った。(取材・文:浅見祥子、写真:高野広美)

人間の“暗部”に迫るストーリー

赤い雪
映画『赤い雪 Red Snow』より - (C) 2019「赤い雪」製作委員会

 『赤い雪』はこう始まる。視界を白く煙らせる吹雪の中、赤い服を着た少年がひたすら走る姿が左右に揺れる映像で映し出される。それは少年を追う兄・一希の目線。角を曲がった瞬間、少年はこつ然と姿を消す。辺りを見回しても、赤い後ろ姿はどこにもない。画面が切り替わって晴れた空、転々と雪についた足跡を振り返り佇む一希。事件から30年、彼の脳裏には浮かぶものは?

赤い雪
会話が盛り上がる2人

 この、ただごとでない映画が始まる予感。それは脚本の段階も同じで「読み始めると映画を観るように、最後まで一気に読み終えました。その謎解きに引き込まれ、人間の暗部から決して逃げずに脚本へ落とし込める監督って? これが映像化されたら? と興味が尽きなくて」と永瀬は出演を決める。それはもう一人の主人公を演じた 菜 葉 菜 も同じ。「骨太で重厚感のあるお話というのが第一印象。これがやりたい! という甲斐さやか監督の強い思いが伝わり、その感性は自分とガッツリ合う。この世界観に飛び込んでみたいと思いました」。

登場人物たちの奥底に潜む狂気…

 一希を演じた永瀬は「簡単に理解できる役ではなかった」と振り返る。一希は弟を見失った自分を責めながら成長し、口数の少ない漆塗り職人に。弟を追う悪夢を見続けるも角を曲がったその先、夢の終わりにはいつまでもたどり着けない。彼の記憶の喪失が事件の真相をさらなる闇へ沈めることになる。「記憶を都合のいいように塗り替えることってありますよね。その激しさを想像して演じました。じつは……僕も幼いころに弟を亡くしまして。弟の記憶は薄れるのに、失ったものの存在は身近になって大きさを増す。弟を亡くすというリアリティーが、そもそも僕にあったんです」と衝撃の事実を明かし、その記憶を核に演じたという。

赤い雪
大人の色気たっぷり

 菜 葉 菜 にとって、早百合を演じることは精神的にも肉体的にも過酷なことだった。母の早奈江(夏川結衣)は残忍な事件をいくつも起こしたかもしれない恐ろしい女。そんな母と事実婚状態の怪しい男・宅間隆(佐藤浩市)と三人で暮らし、発達障害で学校へも行かせてもらえず、自宅の小さなアパートで監禁状態で育ち、現在はその宅間と夫婦同然に暮らしている。ふわっとした優しい印象の 菜 葉 菜 だが「こういう役がやりたかったんです!」と言い切る。「女優ならキレイでかわいくいなきゃ、という思いに囚われていた」という彼女は、転機となった映画『ヘヴンズ ストーリー』を経て、「自分ってなに? と考え、自分自身で勝負できる役と、自分を最大限に出した演技をいいと言ってくれる監督と出会うことが目標でした」とこの役との出会いが運命と強調する。そうして狂気すれすれの孤独を生きる女を体現、その表情は一目で人を荒涼とした気持ちにさせる。宅間役の佐藤との肉体を介したやりとりもまた、やりきれない孤独と複雑な感情を交換するようで目が離せない。

赤い雪
劇中とは別人のよう!

恐怖!クライマックスシーンの裏側

 これが長編デビュー作となる甲斐監督の、俳優を暴走寸前の演技へ導く手腕に触れ、「恐るべき監督ですよ」と永瀬が言う。クライマックスは怒りを内に秘めた一希がついに殻を破り、事件を目撃したはずの早百合を雪山で問い詰めるシーン。画的に超怖い! それを演じる 菜 葉 菜 の恐怖は想像以上で、「ある日監督にふと、怖いものは? と聞かれ、閉所恐怖所と話したらあのシーンが生まれたんです。酷いですよね!」と笑う。

赤い雪
映画『赤い雪 Red Snow』より - (C) 2019「赤い雪」製作委員会

 一方の永瀬は、「弟はどこへ? という疑問と、失われた記憶に答えが? という不安を一希は持ち続け、親に責められ、そうした想いを性格的に外へ吐き出せずにひたすら積み重ねた。それがあの瞬間に弾けたのかなと。女性監督は狂気を始め、人間の美化しちゃいけないところを見据えてじっくり向き合う。そこに嘘をつかない」と作品の出来に確かな手応えを感じている。菜 葉 菜 は曖昧な記憶というもので成り立つ人生のミステリアスな側面に思いを馳せたようで「“記憶と実際に起こったことは違う、けれど真実は一つ”。そんなセリフに集約されるように誰にでも過去があり、その記憶があり、それを打ち消したり引きずったりして生きています。だからこそ一希や早百合のような経験がなくても共感してもらえるはず」と胸を張る。

 洗練された映像で描かれるどうにも読み切れない謎解きにハマり、高い緊張感を保つサスペンスの結末を思ってドキドキし、シャレにならない重厚な人間ドラマに引きずり込まれる。この映画に触れた人間の心に渦巻くものは? 途方もない映画であるのは確かなようだ。

赤い雪
視線の先は……

映画『赤い雪 Red Snow』は2019年2月1日公開

公式サイト

(C) 2019「赤い雪」製作委員会

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