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キセキの再上映決定!“町のビデオ屋”安田淳一が挑んだ米作りエンターテインメントムービー再び!

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 2014年、破格の低予算で作り上げた自主制作ヒーロー映画『拳銃と目玉焼』を自ら配給し、都内大手シネコンでの公開を実現した“町のビデオ屋”安田淳一監督の最新作『ごはん』。前作以上の低予算と少人数体制にもめげず、4年の月日をかけて完成した同作は、1月に都内・新宿バルト9をはじめ大阪・横浜・京都・博多など全国都市で公開された。上映時間が限られているにもかかわらず、劇場には大勢の観客が会場に詰めかけ大盛況となり、高い評価を背景に大阪・シアターセブンをはじめ全国ミニシアターでの再上映が決定。涙ぐましい努力とこだわりを映画に入魂する安田監督の新作は、伝説の斬られ役福本清三も出演するなど役者陣もプロフェッショナルで、なによりジブリ映画のヒロインのように一途で純粋な女性が、本格的な米作りを通して亡き父の記憶にふれる姿は観る人の心の琴線に触れる力がある。(編集部・入倉功一)

■製作費は前作以下の400万円!地道な努力が生む高いクオリティー

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インディーズ映画でありながら、映画ファンの支持を集め、主要都市シネコン公開やDVD全国流通など異例の展開を見せた『拳銃と目玉焼』。(C)「未来映画社」

 京都でビデオ撮影業を営む安田監督は、40歳を過ぎたころ「やりたいことをやらなあかん」と一念発起。本業の会社が傾く危機を乗り越えながらも、3年の月日をかけて『拳銃と目玉焼』を完成させ映画ファンを中心に高い評価を得る。さらに、自身のレーベル「未来映画社」を立ち上げると、ミニシアターを皮切りに6都市での公開を実現。その後もDVDが全国のレンタル店に流通し、Hulu・Netflixといった大手配信サービスでも『拳銃と目玉焼』が配信されるなど、インディーズの枠を超えた展開で邦画界に一石を投じた。一つの挑戦を終えた安田監督だが、『ごはん』は前作とは全くタイプの違う映画。都会で暮らしていた女の子が、一見のどかで牧歌的な雰囲気と思われがちだが、実は非常にシビアで過酷な米作りの世界に飛び込む姿を、美しい映像と徹底したリアリティーで描き出した作品で、安田監督は、前作以上の苦難を乗り越えなくてはならなかったという。

 「(自主制作であっても)スタッフや役者さんにちゃんとギャラをお支払いするのが僕の主義なので、『拳銃と目玉焼』も最終的に700万円ほどかかりました。『ごはん』の予算はもっと安くて約400万円。スタッフも、ヒロインの農作業シーンは僕と主演の沙倉ゆうのちゃんと2人だけ。固定でカメラ位置を決めたら、はだしで田んぼに入って自分でレフ板を持ったりしてよーいスタートって言って撮ってました(笑)。田んぼの風景を撮るときもほぼ一人でしたね」。そんな田んぼのシーンは生き生きと生命をたたえ、美しい画となり胸に迫る。

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4年もの時間をかけて撮られた、美しく丁寧な映像表現も見もの。 (C)「未来映画社」

 コツコツと撮影したロケ日数は驚愕の160日! 費やした期間は4年に及んだ。文字通り「地道な努力」の積み重ねによって作品は完成した。「仕事で伝記映画なんかを撮る場合は、だいたい20日以下で撮るなどキチっとやります。常々『映画は第一義的には商品だ』とうそぶいているのに、いざ撮ると商売度外視に……。何度も撮りなおしてクオリティーを上げることができるのは、自主映画の最大の強みだと思います」。広大な稲穂の田んぼの中にたたずむヒロインを捉えたシーンでは、一度は撮影したものの、その時の自然光や風の吹き方に納得がいかず。カメラについても、もっと高い位置から撮りたいと考えて映像をボツに。十分な高さが得られる三脚を購入し、理想的な光と風が得られる日を待ちながら、3年をかけて幾度も撮り直しがされた珠玉のシーンに仕上がっている。

■まるでジブリヒロイン!純粋なヒロインの魅力

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古風なたたずまいも魅力的な沙倉。(C)「未来映画社」

 そんな本作は、米作りを営んでいた父の死をきっかけに1万5,000坪もの広大な田んぼを切り盛りせざるを得なくなった東京の派遣OLヒカリ(沙倉)の奮闘を描く人間ドラマ。東京で働いていたヒカリが、地方で未経験の米作りの世界に飛び込み、確執のあった父との過去を振り返りながら成長していく姿は、主演女優・沙倉のどこか古風なたたずまいも相まって、スタジオジブリ映画おもひでぽろぽろの主人公を思い起こさせる。

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のどかではすまない、労働としての米作りを真正面から描く。(C)「未来映画社」

 「ジブリは全く意識していませんでした。ただカメラマンとしては日本映画史上最も美しく田んぼを撮る、監督としては現代のリアルな米作りをきちっと描くという目標を立てました。でも、稲穂の草原をヒロインが歩くシーンを観て『ゴム長靴のナウシカ』と言って下さる方もいたりして、そこは本当に光栄なことだと思っています」(安田監督)。

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この何気ない日常に存在する美しさは、人の営みあってこそ。 (C)「未来映画社」

 困難を前に、悩みながらも男顔負けの度胸とポジティブなエネルギーで米作りにまい進していくヒカリの姿はジブリヒロインそのもの。美しくも、背景に高速道路が映るリアルな田んぼの景色は、多くの人にある種の懐かしさを呼び覚まし、より感動を深める。「川や山は、基本的にはそのままでも川や山であり続けます。しかし田んぼの風景は、毎年お百姓さんが稲を植えて、育てて、稲刈りをしてっていうサイクルを経ないと見られないものです。そういう積み重ねられた時間に気づいたとき、良い映画になることを直感しました」(安田監督)。

■4年間役者は体型維持!…殺人的なスケジュール調整!

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4年間、髪形も変えずに撮影に挑んだ沙倉。(C)「未来映画社」

 ビデオ撮影業を生業にする一方で、実家は米作りを営んでいる安田監督は当初、主演女優・沙倉が出演する15分ほどのショートフィルムを作る予定だった。しかし「親父に何かあったら田んぼはどうなるのだろう」と我が身を振りかえると、大変な事態になることが容易に想像できた。「あまつさえそれが女の子だったら……」面白い映画になると確信したという監督は取材を進め、意外性に満ちた米作りのノウハウに触れ、「この企画は面白さの宝庫じゃないか!」と思ったそうだ。かくして『ごはん』は長編映画として製作されることになった。

 ヒロインと並ぶ重要キャストが、「田んぼ」と「コンバイン」。中でも田んぼの稲は、脚本の完成や俳優のスケジュールを待つことなく成長してしまう。「稲の生育状況に合わせて撮らなくてはいけないし、明るいシーンは晴れた日に、暗いシーンは曇った日にとこだわっていた。コンバインといった農機具を使うときは、実家や貸してくれるお宅で使わないタイミングを計らなくてはいけない。とにかくスケジュール調整が超人的な大変さでした」と振り返る。

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映画のもう一人の主役? コンバインを借りるだけでも一苦労だった。(C)「未来映画社」

 そんなスケジュール調整や、監督のこだわりもあって撮影は困難を極め結果的に4年の月日を要することとなった。

 主演の沙倉は、髪形もスタイルも維持しなくてはならない。4年間泣き言ひとつもらさず撮影に参加。次第に田植え機やコンバインといった大型農業機械の操作も習熟。ロケ中、周囲の農家から「ぜひウチの嫁に」と引き合いが多数だったという。

 この映画の重要なポイントは、現代的な米作りの描写。「米農家の就労平均年齢は65歳以上。機械に頼ることで高齢化を補っているのが現状で大型農機なしではやっていくのは難しい。また、米作りの担い手がいないと田んぼを相続する際、宅地並みの課税となり税金が高くなってしまう。だから人に頼んでも作り続けなくてはいけない。米作りの担い手が少しでもいる農家に田植えや稲刈りを依頼することになる。そこで活躍するのが田植え機やコンバイン。映画では特にコンバインをスーパーロボットヒーローのように描こうとしました。大規模小作農家の米作りはまさに田んぼとの格闘。都会の人が農業を撮ると、無農薬だとか癒やしだとかそんな目線になってしまいがち。僕はリアルな米農家の姿と、喜びとを描きたかった」。

■“伝説の斬られ役”度重なるリテイクにいやな顔ひとつしない神対応

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文句なしにカッコイイ!  (C)「未来映画社」

 若手だけでなく、関西を代表する女優・紅壱子がヒカリの叔母役を、「SPEC(スペック) ~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」の刑事役などを務めた井上肇がヒカリの父親役を務めるなど実力派も出演。紅と安田監督は『拳銃と目玉焼』でタッグを組んだ仲。また井上は、『拳銃と目玉焼』に主演した俳優・小野孝弘と知り合いだったことでオファーが実現した。

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時代劇とは一味違う、静かな動きをみせる福本に注目!(C)「未来映画社」

 そして、映画『ラスト サムライ』トム・クルーズと共演し、日本で斬られ役といえばこの人の右に出る者はいないという福本清三もヒカリを手助けする老農夫役で出演。安田監督は「僕はビデオカメラマンとして東映太秦映画村の下請けなどもしていたので連絡先を教えていただきオファーをしたんです。すると担当の方が『拳銃と目玉焼』をご存知で、あの安田さんであればと福本さんの出演が決まりました。嬉しかったですね」と振り返る。

 福本にとっては珍しい農夫役。侍を演じ続けた男が、鎌を手に百姓を務める姿は映画ファンにとっても感慨深いものがあるはずだ。時代劇ファンがニヤリとする名ゼリフも用意されている。出演料も東映側の配慮で極力抑える形で協力。そして福本氏はとにかく手を抜かない本物の役者。撮影中、リテイクが重なることも多々あったが、その神対応に驚かされたという。「長まわしのカットで撮影のミス、他のキャストのミス、照明のミスが重なった。福本さんにはリテイクごとにしっかりとNGの理由を伝えさせていただきました。福本さんはとても誠実な方。嫌な顔ひとつせず応じてくれて以前よりもっとファンになりました」

■映画作りはまるで米作り…目指すゴールはさらに先!

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映画を作るだけでは終わらない、安田監督の挑戦とは! (C)「未来映画社」

 「空撮シーンは撮影2年目に業者さんにお願いして撮ったもので、当時はドローンとは呼ばずマルチコプターと言ってました。ワンカットに12万円かかりました。最近撮った空撮は知り合いの監督さんが買ったドローンを使ったので友達価格で1万5,000円。4年も撮っていると世の中変わるもんです」と笑う安田監督。安くない資金を投入し、道具を集め、長い月日をかけて何かを生み出す。安田監督の映画作りはどこか米作りに似ているかもしれない。

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茶碗一杯のごはんと同じ、一つ一つのカットにドラマがある。 (C)「未来映画社」

 しかし完成だけが安田監督にとっての“収穫”ではない。「『拳銃と目玉焼』は正直なところ大赤字です。だから今回は製作費のコストダウンをはかった。インターン生の受け入れもその一環。交通費やご飯代で手伝ってもらった。

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新宿バルト9の舞台あいさつも満員! (C)「未来映画社」

 最終的な目標は、映画を作るだけじゃなく、宣伝・配給をし、収益を上げて次の作品を制作する。いわば低予算映画の製作サイクルを確立すること。公開もシネコンはもちろん、ミニシアター上映、DVD、ネット配信だけではなく今後は地方のホールを借りての自主上映、また上映依頼を受け付けてのマスターレンタルにも積極的に取り組んでいきたい」と語る。

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梅田ブルク7の様子 (C)「未来映画社」

 再上映はその目標への新たな一歩となるはず。さらに、かつて『拳銃と目玉焼』を上映し、拡大公開の大きな力となった大阪・シアターセブンでは『拳銃と目玉焼』と『ごはん』の日替わり上映を実施。15日には作家・コラムニスト竹内義和氏とのトークショーも予定している。安田監督が植えた稲は、月日をかけて確実に実っている

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(C)「未来映画社」

映画『ごはん』再上映日程は下記の通り

■香川高松 ソレイユ2
3/11(土)~24(金)13:05~ 舞台挨拶3/11

■淀川文化創造館 シアターセブン※『拳銃と目玉焼』との日替わり上映
3/11(土)~14(火)19:00~『ごはん』
3/15(水)~18(土)19:00~『拳銃と目玉焼』※18(土)のみ16:20~
3/20(月・祝)~24(金)16:20~『ごはん』
3/15(水)は上映後、安田監督・竹内義和トークショー予定
ほぼ連日舞台挨拶あり

■名古屋 シネマスコーレ
3/18(土)~24(金)舞台挨拶3/18

■京都 立誠シネマ
4/1(土)~7(金)13:10~
4/8(土)~14(金)15:30~

また自主上映の要望も気軽に受け付けている。問合せはxxx@osa.att.ne.jp未来映画社「ごはん」上映会受付まで。

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