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リメイク版『死霊のはらわた』公開! スプラッター映画の伝統を追う!

今週のクローズアップ

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今週のクローズアップ 厳選! リメイク版『死霊のはらわた』公開!スプラッター映画の伝統を追う!

 映画『スパイダーマン』シリーズで一躍ハリウッドを代表するクリエイターとなったサム・ライミ監督の出世作『死霊のはらわた』がついに日本公開を迎える。1980年代に日本で一大ブームを巻き起こした、スプラッターブームの火付け役ともいわれる同作復活を前に、スプラッター映画の歴史や代表作を簡単に振り返ってみたい。

スプラッターブームとは何だったのか……

 スプラッター映画とは一般に、人間の四肢や首が切断され、血が水のように飛び散る描写を特徴とするホラー映画ジャンルを指す。描写としてのスプラッターに着目すると、女性の眼球がカミソリで引き裂かれるシーンで有名な、1928年のフランス映画『アンダルシアの犬』が始祖と呼ばれるなど、その歴史はあまりにも古い。人間の肉体が破壊されるようなショッキング描写は、観客に非日常を提供してきた映画の歴史において、無視できないものだ。

 

『死霊のはらわた』より
定義は難しいが、やりすぎ! 名位の人体欠損や血しぶきはスプラッター映画ならではのもの

 そんな中にあって『死霊のはらわた』がスプラッターブームの火付け役とされるのは、まず「スプラッター」という言葉が日本で紹介された初めての作品であったことが大きい。また当時黄金期を迎えたレンタルビデオに代表される、ビデオブームの存在も大きかった。映画館でもかけられないような、各国のさまざまな低予算ホラーが、おどろおどろしいジャケットと邦題と共に店頭に並んだ。ゴミ映画と呼ばれるものから隠れた佳作までが大量にリリースされ、DVDの普及でさまざまな名画が再販される現在においても、入手困難となったビデオも多い。

 

日本にブームを巻き起こしたオリジナル版『死霊のはらわた』DVD 1,480円(税込み)
リリース日:2013年4月24日 / ブルーレイ発売中 2,500円(税込み)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

スプラッターを代表する作品たち!

 そんなスプラッター映画の始祖と称される人物が、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督だ。1960年代、当時ハリウッドの厳しい倫理規定を尻目に、インディペンデントの現場でポルノ映画を制作し成功を収めたルイス監督は、ホラー映画に目を付ける。そこで挑戦したのが、直接的な残酷表現だった。1963年に制作した映画『血の祝祭日』は、古代エジプトの女神を崇拝する料理店の店主が女性の舌を引っこ抜き、目をつぶし、足をちぎる残酷描写のオンパレードで、現在ではスプラッター・ムービーの元祖と認識されている。『2000人の狂人』『カラー・ミー・ブラッド・レッド』などルイス監督の作品は、やはり1980年代のビデオブームの中で発掘され、ブームの一端を担った。

 
スプラッター映画の始祖とも呼ばれるハーシェルの作品群 「ハーシェル・ゴードン・ルイス ブルーレイBOX」発売中 
価格:2万1,000円 
発売・販売元:キングレコード株式会社

 また一般的にスプラッター映画の王道として語られることが多いのが、伝説的スラッシャー(殺人鬼)映画『13日の金曜日』。ホッケーマスクをかぶった殺人鬼「ジェイソン」の殺戮を描いた作品として名高いが、記念すべき1作目では、彼の母親が犯人だ。キャンプ地でもある「クリスタル・レイク」を舞台に、かつて湖で息子ジェイソンを溺死で亡くした母親が、注意を怠っていた湖の監視員を思わせる若者たちを血祭りに上げる。すでに『ゾンビ』でその手腕を発揮していた特殊メイクの巨匠トム・サヴィーニが手掛けた残酷描写は、現在見ると控えめながら、当時の観客にショックを与えた。ベッドに横たわるケヴィン・ベーコンの首が矢で貫かれ、血が飛び散るシーンはあまりにも有名。その後殺人鬼役は彼女の息子へとバトンタッチされ、ジェイソンによるさまざまなバージョンの殺人シーンが売り物となった。

 
『13日の金曜日』
Kobal/PARAMOUNT/The Kobal Collection/WireImage.com

 血みどろの快楽を追求したスプラッター映画は、スラッシャーだけでなく、ゾンビやモンスター映画などホラージャンルの中で名作からカルトまで、さまざまな作品を生み出した。かの有名なフランケンシュタインの物語を下敷きに、女人造人間の内臓を犯す男爵など、変態的な描写をちりばめて映画化した『悪魔のはらわた』や、ジョン・カーペンター監督による『遊星からの物体X』首だけになったマッドサイエンティストがヒロインを犯そうとする『ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり』、人間の頭が吹き飛ぶ『スキャナーズ』やハエと人間の融合を描く『ザ・フライ』など、デヴィッド・クローネンバーグ監督の作品も代表的。非現実を提供する映画の魔法を体現するかのように血みどろ描写が加速していった一方で、観客が少しのことでは驚くことはなくなり、ブームは終焉(しゅうえん)に向かっていった。

 
ジェイソンの殺しのバリエーションからか、スプラッター映画の代表作に挙げられることも多い 『13日の金曜日』Warner Bros/Photofest/ゲッティ イメージズ

 そんなブームの総仕上げ的な作品が、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで知られるピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』ではないだろうか。とある島からもたらされた珍種のネズミのウイルスによって、母親がゾンビとなった青年の悲喜劇。ゾンビとなった母親をかいがいしく世話する青年の物語を軸に、カンフーでゾンビ退治する神父やゾンビ同士のセックス、その結果生まれるゾンビベビーとの悪戦苦闘など、過剰な描写をとことん追求し笑いに昇華した描写の数々と、クライマックス、芝刈り機を持ち出したゾンビ大群の大量殺りくシーンで飛び散る血しぶきは、映画史上最多出血量ともいわれている。こういった、低予算ながら作り手が全力を傾けたスプラッター映画の数々は、ライミ監督やジャクソン監督など、多くの一線級クリエイターを生み出した。

 
今の作品にも時折『ブレインデッド』『バッド・テイスト』時代が顔をのぞかせるピーター・ジャクソン監督 Robert Patterson / Getty Images
ホラー界にも新世代・リメイクの波!

 そして現在、かつてブームの洗礼を受け、ビデオショップでどうしようもない作品から隠れた名作まで、あびるほどのホラー映画の洗礼を受けた製作者たちが、ハリウッドの第一線に進出している。『ホステル』イーライ・ロス監督などはその代表者といえるだろう。セックスにつられヨーロッパのあるホステルを訪れたバックパッカーの青年たちが拷問クラブに捕らえられ、まさにはらわたをえぐられる恐怖体験に巻き込まれる。ロス監督をはじめ新たな作り手たちによるスプラッター作品は、恐怖と笑いの近似性を逆手に取り血まみれを笑いに昇華したかつてのスプラッターブームとは違い、リアルで写実的な描写による、暴力の陰惨な面を押し出す傾向が強くなったようにも思える。

もうセックス憧れませ~ん!? 容赦ない拷問描写で話題を呼んだ『ホステル』Kobal/HOSTEL LLC/LIONS GATE FILMS/The Kobal Collection/WireImage.com

 一方、かつてホラーファンを熱狂させたスプラッター映画は、2000年代に入ってから『死霊のはらわた』のように、数多くのリメイクが製作された。一般的にリメイクには、業界の企画力のなさや「あの作品を超えられるわけがない……」とマイナスの捉え方をされるケースも多い。もちろん目もあてられない出来の作品がないわけではないが、時代に合わせた新たな要素や、伝説の前日譚(たん)を描くという、新たな描き方に挑戦することで、評価すべき内容になることも少なくない。

7月13日公開! 『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』
(C)2013 TWISTED CHAINSAW PROPERTIES,INC. AND NU IMAGE,INC.

 例えばフランス産血まみれスプラッター『ハイテンション』で注目されたフランス人監督アレクサンドル・アジャ監督は、『サランドラ』を、壮絶なグロ描写でリメイクした『ヒルズ・ハブ・アイズ』を製作。これも快作だった。ちなみにアジャ監督は、ジョー・ダンテ監督のモンスター・ホラーのリメイク『ピラニア3D』もエログロ描写を快活に描いた大傑作としてリメイク。さらに1980年代にカルト的人気を博した『マニアック』のリメイクでは脚本と製作を兼任。こちらもイライジャ・ウッドが『ロード・オブ・ザ・リング』のイメージをかなぐり捨て、女性の頭皮を刈り取る殺人鬼に挑戦した話題作となっている。現在アジャ監督は、日本を代表するSFコミック「コブラ」のハリウッド実写版企画にも携わっており、今後の動向が気になるクリエイターの一人だ。

イライジャが指輪を捨てた『マニアック』は6月1日公開!
(C) 2012 - La Petite Reine -- Studio 37

 また『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイ監督率いるプロダクションであるプラチナム・デューンズによる『悪魔のいけにえ』のリメイク『テキサス・チェーンソー』がある。マーカス・ニスペル監督が手がけた同作は、オリジナルを超えたとはいえないにしても、現代的な解釈とR・リー・アーメイの起用が幸いしてか、注目に値する作品として一定の評価を受けた。さらに同作は、監督をジョナサン・リーベスマンにバトンタッチし、シリーズ前日譚(たん)ともいえる作品『テキサス・チェーンソー ビギニング』を生み出した。レザーフェイス誕生を描いた同作は、しっかりとホラー映画ファンをうならせる快作に仕上がっていたといえる。またリメイクではないが、正式な続編となる3D映画が、『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』というナイスな邦題で公開予定となっている。

こちらは正式な続編『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』7月13日公開
(C)2013 TWISTED CHAINSAW PROPERTIES,INC. AND NU IMAGE,INC.

 そこへきての『死霊のはらわた』である。バカンスにやって来た若者グループが、森の奥のキャビンで「死者の書」の封印を解いたことから恐ろしい死霊の犠牲になっていく……。ホラー映画の典型のようなオリジナル版はしかしながら、映画界での成功を懸けたライミ監督が、己が知るあらゆる映画知識を全て詰め込んだ、まさに限界を突破する作品だった。またゾンビや殺人鬼など、多くの場合殺りくを働く怪物が人気を集める傾向にあるホラー映画にあって、同作は本来犠牲者であるはずの、ブルース・キャンベル演じる主人公アッシュというヒーローさえ誕生させてしまった。リメイク版にはアッシュが登場しないなど不安要素も多い。それでも新鋭のフェデ・アルバレス監督が、CGを使用せずに挑んだ残酷描写はリアルそのもの。旧作はアクション・コメディーなど全ての要素が詰まった作品となっていたが、本作は笑顔の入り込むスキのない、徹底的に観客を追い込む内容となっている。それを良しとするか、それとも否定するかは、ぜひ劇場で鑑賞の上で決定してほしい。かつてのスプラッターブームより後に生まれた世代が目にすることで、新たなクリエイター誕生のきっかけになってくれることを願いたい。

映画『死霊のはらわた』は5月3日より全国公開

リメイクホラーの傑作となれるか!? すでに怖すぎな『死霊のはらわた』

限界突破の残虐描写は見もの! スクリーンで体感してほしい

文・構成:シネマトゥデイ編集部 入倉功一

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