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コンペティション部門 作品紹介

第61回ベルリン国際映画祭

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ベルリン映画祭ニュース

2月10日(現地時間)から、第61回ベルリン国際映画祭が開幕。フォーラム部門、パノラマ部門などには、日本映画が多数出品されていますが、コンペティション部門には残念ながら入りませんでした。ここでは、最高賞の金熊賞を狙うコンペティション部門16作品をご紹介します!

金熊賞&最優秀女優賞&最優秀男優賞

ナデール・アンド・シミン、ア・セパレーション(英題) / Nader And Simin, A Separation

ナデール・アンド・シミン、ア・セパレーション(英題) / Nader And Simin, A Separation

Siminは夫と娘と共にイランを出たいと準備をしていた。しかし夫は、アルツハイマー病の父を置いて出ることを心配し、家に残ることを決めた。それによって、妻は家庭裁判所に離婚を申し出ることに。しかしその要請は却下され……。

これまでのイラン映画とは一線を画す心理サスペンス『彼女が消えた浜辺』で、2009年の本映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞したアスガー・ファルハディ監督。イラン当局に逮捕されたジャファル・パナヒ監督のオマージュ上映が本映画祭で開催されるが、パナヒ監督を支持するファルハディ監督にも当局は本作の制作中止を命じている。作品の内容と賞の行方、さらにはファルハディ監督の会見に世界中が注視するだろう。

銀熊賞(審査員賞)

ザ・チューリン・ホース(英題) / The Turin Horse

ザ・チューリン・ホース(英題) / The Turin Horse

1889年1月3日、イタリア・トリノ。御者(馬車を運転する人)に虐待されていた馬を見たニーチェは、泣きながら馬の首にしがみつき、そのまま気絶してしまう。それがあってからのニーチェは二度と筆を執らず、精神を錯乱し、口を閉ざしたのだった。

ハンガリーの鬼才、『倫敦(ロンドン)から来た男』のタル・ベーラ監督が、ドイツの哲学者ニーチェの晩年のエピソードからインスパイアされたという物語。2001年に『ヴェルクマイスター・ハーモニー』でベルリナー・ツァイトゥング紙・新聞読者賞を受賞して以来となる今回のベルリンだが、各国の映画サイトによるとかなり期待値も高いよう。大哲学者ニーチェを演じるデルジ・ヤーノシュの演技によっては、賞に絡んでくる可能性も!

銀熊賞(最優秀監督賞)

スリーピング・シックネス(英題) / Sleeping Sickness

スリーピング・シックネス(英題) / Sleeping Sickness
Patrick Orth © Komplizen Film, Berlin 2011
  • ドイツ、フランス、オランダ
  • ウルリッヒ・コーラー
  • ピエール・ボクマ、ジーン-クリストフ・フォーリーほか

アフリカで20年近く、眠り病についてのプログラムに取り組んでいるエボだったが、一方で妻・ベラはこの地での国際的なコミュニティーや、ドイツにいる14歳の娘と離れて暮らすことに不満を募らせていた。しかし、夫・エボはヨーロッパに戻ることに不安を覚えるようになっていて……。

2002年のデビュー作『Bungalow』(原題)が本映画祭のパノラマ部門で上映されたほか、各国の映画祭で評価されたウルリッヒ・コーラー監督。長年のパートナーであるマレン・アデ監督の『Alle Anderen』(原題)は一昨年の本映画祭コンペ部門に選出され、銀熊賞&女優賞を受賞。故郷を離れて暮らす夫婦の運命を描いた本作で、コーラー監督も初のコンペ選出を果たした。今後のドイツ映画界を占う上でも動向が気になるところだ。

芸術貢献賞(カメラ)&芸術貢献賞(プロダクション・デザイン)

ザ・プライズ(英題) / The Prize

ザ・プライズ(英題) / The Prize
  • メキシコ、フランス、ポーランド、ドイツ
  • パウラ・マルコヴィッチ
  • パウラ・ガリネッリ・ハーツォグ、シャロン・ヘレラほか

1970年代、軍事政権下のアルゼンチンで反体制派の家族と共に海辺の村で暮らす7歳の少女。ある日、小学校で軍隊についてのエッセー・コンクールが開かれ、少女が母親から聞いた話を書いたことから、家族は危険にさらされることになる。

国際映画祭で注目されるメキシコ映画界の新星、フェルナンド・エインビッケ監督の右腕として脚本を手掛けるパウラ・マルコヴィッチの長編監督デビュー作。マルコヴィッチ監督の故郷の村でロケを敢行した本作は、監督の半自伝的ストーリー。1970年代、アルゼンチンの軍事政権時代を一人の少女の視点でつづるストーリーは、社会派作品を好む傾向にあるベルリン映画祭だけに話題を集めそうだ。

最優秀脚本賞

ザ・フォーギブネス・オブ・ブラッド(原題) / The Forgiveness Of Blood

ザ・フォーギブネス・オブ・ブラッド(原題) / The Forgiveness Of Blood
© 2009 Concorde Filmverleih GmbH / Tom Trambow

17歳のNikは高校卒業後、インターネットカフェをオープンさせたいと思っていた。彼の妹もまた、大学に通う夢を持っていた。しかし、彼らの家族は土地の所有権をめぐる争いに巻き込まれ、父は殺人で訴えられるはめに……。

デビュー作『そして、ひと粒のひかり』が、2004年の本映画祭をはじめ、世界中の映画祭や賞レースで絶賛されたジョシュア・マーストン監督の待望の長編第2作目。アルバニアで今も残る「カヌン」と呼ばれる伝統的なおきてをテーマに、公然と殺し合う氏族間の復讐(ふくしゅう)の連鎖を描く衝撃作。マーストン監督はアルバニアで2年間かけてリサーチを行い、素人や無名の俳優をキャスティングした。フィクションではあるが、波紋を呼ぶことになるだろう。

アルフレート・バウアー賞

イフ・ノット・アス、フー?(英題)/ If not us, who?

イフ・ノット・アス、フー?(英題)/ If not us, who?
© Markus Jans / zero one film

1961年、父親がナチスという過去に向き合う編集者のベルンヴァルト・フェスパーは、真実を追求する活動家の女性グドルン・エンスリンと出会い、出版社を設立する。2人の間には息子も誕生するが……。

演劇学校に通う俳優の卵を追ったドキュメンタリー映画『芝居に夢中』のアンドレス・ファイエル監督の新作。実際の場所でロケを敢行し、後にドイツ赤軍を創設するアンドレアス・バーダーと恋に落ちた女性グドルン・エンスリンと、彼女の元パートナーのベルンヴァルト・フェスパーと息子フェリクスの関係を描く。新世代のドイツ人監督が描く悲恋の物語は大いなる話題を呼ぶに違いない。

アワ・グランド・ディスペア(英題) / Our Grand Despair

アワ・グランド・ディスペア(英題) / Our Grand Despair
  • トルコ、ドイツ、オランダ
  • セイフィ・テオマン
  • ファティ・アル、バーキ・ダヴラクほか

30代後半のエンダーとチェティンは高校時代からの悪友。両親が急死した友人フィクレト(バーキ・ダヴラク)から、自分は米国赴任中のため、「妹ニハルが大学を卒業するまで居候させてほしい」と2人に頼む。最初はギクシャクした3人の同居生活だったが、2人はニハルに恋してしまう。

2008年の本映画祭フォーラム部門に選出され、東京国際映画祭アジアの風部門で上映された映画『夏休みの宿題』のセイフィ・テオマン監督の長編第2作。本作では米作家レイモンド・カーヴァーに匹敵するというトルコの作家Baris Bicakciの小説を脚色した。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督に続く、トルコの次世代監督として注目を集めている。

ザ・フューチャー(原題) / The Future

ザ・フューチャー(原題) / The Future
© 2011 Todd Cole

ソフィー(ミランダ・ジュライ)とジェイソン(ハミッシュ・リンクレイター)は30代のカップル。ある日、街中で足をケガしたノラ猫を助け、1か月間世話をすることに。パウパウと名付けた猫と暮らす日々が、人生の最期だと想定する試みを思い付く。

長編監督デビュー作『君とボクの虹色の世界』で2005年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールを受賞したジュライ監督が、満を持して発表した長編第2作。彼女は前作同様に、監督・脚本・主演を務めた。2004年にフィルムメーカーマガジンが発表した注目の新インディペンデント系映画製作者1位に選ばれており、独自の世界観が高く評価されている。

コリオレイナス(原題) / Coriolanus

コリオレイナス(原題) / Coriolanus
© Coriolanus Films Ltd.

民主制と貴族制が対立し、貧民たちは暴動寸前のローマ。勇敢な戦士コリオレイナス(レイフ・ファインズ)は、母ヴォラムニア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)に強要され執政官選挙に出馬し就任する。だが反対派の扇動によって、反逆罪で告発され、死刑に変わり追放刑とされてしまう。

イギリスの名優レイフ・ファインズが、シェイクスピア後期の悲劇を題材とした初監督&主演作に臨む。宿敵役には、ジェラルド・バトラー。また重鎮ウィリアム・ハートとヴァネッサ・レッドグレーヴという豪華キャスト。脚色は『アビエイター』『ラスト サムライ』などヒット作を手掛けているジョン・ローガン、撮影は映画『ハート・ロッカー』などのバリー・アクロイドと、傑作要素が多く映画祭をにぎわせそうだ。

テイルズ・オブ・ザ・ナイト(英題) / Tales Of The Night

テイルズ・オブ・ザ・ナイト(英題) / Tales Of The Night
© 2011, Nord-ouest Films - Studio O - StudioCanal

古い映画館に毎夜集う少年と少女、老いた技術者。この映画館には秘密があった……。不可能なことなんてない魔法のような夜、魔法使いと妖精、王様と馬小屋の少年などなりたいものに変装しては、3人はさまざまなストーリーを演じていた。

『キリクと魔女』『アズールとアスマール』で知られるアニメーション作家ミッシェル・オスロ監督の最新作は、コンペティション唯一の3Dアニメーション作品。世界三大映画祭の長編コンペ部門に参加するのは、今回が初となるオスロ監督。絵画のような鮮やかで独特な色彩でベルリンの観客を魅了し、2002年の本映画祭でアニメで初の金熊賞を受賞した『千と千尋の神隠し』に続くか、見守りたい。

マージン・コール(原題) / Margin Call

マージン・コール(原題) / Margin Call

2008年、ウォール街の投資会社で働く新人アナリストのピーター・サリバン(ザカリー・クイント)は、会社の危機に関する情報を漏らしてしまう。その行動が招いた混乱によって、突然多くの人々が経済的にも道徳的にもがけっぷちに立たされることとなり……。

ケヴィン・スペイシーやジェレミー・アイアンズ、ポール・ベタニーといった実力派俳優が顔をそろえ、世界金融危機に直面した金融マンたちの24時間を描く経済スリラー。豪華なオールスターキャストと同様に気になるのは、本作で長編監督デビューするJ・C・チャンドールという無名のインディーズ監督。大きなチャンスをつかむこととなった脚本の出来栄えによっては、初監督作品での賞も狙えるかも。

カム・レイン・カム・シャイン(英題) / Come Rain Come Shine

結婚5年目、好きな男ができたから別れたいと告げる妻に、コミュニケーションが不得意な夫は何も言うことができない。家を出ていく妻のために夫はコーヒーをいれ、彼女のお気に入りのティーカップを包んでやるのだった。

長編デビュー作品『チャーミング・ガール』で2005年の本映画祭フォーラム部門でNetpac賞を受賞したイ・ユンギ監督が、妻が家を出る瞬間までの3時間をほとんどリアルタイムで見せる異色の恋愛ドラマ。日本でも人気のある『サイボーグでも大丈夫』のイム・スジョンとドラマ「私の名前はキム・サムスン」のヒョンビンが若い夫婦役をノーギャラで引き受けている。アジアの代表として、健闘を期待したい。

ア・ミスティアス・ワールド(英題) / A Mysterious World

ア・ミスティアス・ワールド(英題) / A Mysterious World
  • アルゼンチン、ドイツ、ウルグアイ
  • ロドリゴ・モレノ
  • エステバン・ビグリアルディ、セリシア・ネイネロほか

恋人のアナから一時的な別れを告げられたボリス。彼女に理由や期間を尋ねても答えは得られないまま。そこでボリスは車を購入し、疎遠になっていた同級生に会ったりと気分転換をはかるのだが……。

『El custodio』(原題)を2006年の同映画祭に出品し、称賛を浴びたアルゼンチン出身のロドリゴ・モレノ監督の最新作。革新的なスタイルを編み出したストーリーテラーとして評判だけに今回のワールド・プレミアも盛り上がるだろう。

イノセント・サタデー(英題) / Innocent Saturday

イノセント・サタデー(英題) / Innocent Saturday
© Bavaria Pictures
  • ロシア、ドイツ、ウクライナ
  • アレクサンドル・ミンダーゼ
  • アントン・シャーギン、Svetlana Smirnova-Marcinkevichほか

1986年4月26日の土曜日、チェルノブイリ発電所の原子炉塔の爆発を党首は静観した。発電所の職員で元ドラマーのヴァレリは、ガールフレンドやバンド仲間と共に街から避難しようとするが……。

『宇宙を夢見て』などの脚本家アレクサンドル・ミンダーゼが監督・脚本を兼務した第2作。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故を舞台に、主人公の体験と心情を描く。撮影は2007年のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞作『4ヶ月、3週と2日』オレグ・ムトゥが担当する。核とテロの脅威に警鐘を込めた社会派作だけに注目度は高い。

リプスティッカ(英題) / Lipstikka

リプスティッカ / Lipstikka(英題)
  • イスラエル、イギリス
  • ジョナサン・シーガル
  • クララ・フーリ、ナタリー・アッティヤ、ほか

2人のパレスチナ人女性がロンドンで再会した。10代のころ、イナームはセクシーなキリスト教徒で、ララはシャイな性格のイスラム教徒だったが、ララの誕生日に映画を観にいった際にある出来事に遭遇していた。

カナダで生まれ、11歳のときに家族でイスラエルに移住したジョナサン・シーガル監督。俳優として『グローイング・アップ』シリーズのボビー役や、スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』に出演するなど多岐に活躍している。監督としては、1999年の同映画祭出品作『アーバン・フィール(英題) / Urban Feel』以来、2度目のコンペとなる。『リプスティッカ(英題) / Lipstikka』では、ガザで起こったパレスチナ人の民衆蜂起を背景にしたサスペンスで臨む。

エーリング・トゥ・ザ・スカイ(原題) / Yelling To The Sky

エーリング・トゥ・ザ・スカイ(原題) / Yelling To The Sky

留守がちの父と情緒不安定な母をもつ、17歳のスウィートネス・オハラ(ゾーイ・クラヴィッツ)は懸命に生きようとしていた。彼女は人生の目的と意味を見つめるようになる。

女優として映画『キューティ・ブロンド』に出演したヴィクトリア・マホーニーが家族ドラマで監督デビューを果たした。ヒロイン役にはレニー・クラヴィッツの娘ゾーイを起用、また映画『プレシャス』のヒロイン役のガボレイ・シディベも出演。既に次回作『チョーク』(原題)の製作に取り掛かっているマホーニー監督は、2011年注目のハリウッド女性に選ばれているだけに目が離せない。

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