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19年ぶり新作も…『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』賛否両論のワケ

画像は『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』より
画像は『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』より - Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 ハリソン・フォード主演の人気シリーズ第4弾『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)が、30日21時から日本テレビ系「金曜ロードショー」で地上波放送される。この映画は、シリーズ4作の中で最高の興行成績を達成した大ヒット作だが、一方で、作品の出来についてはいろいろな意見がある。製作者の間でも意見の衝突があったストーリーは、どのように生まれたのか。(文/猿渡由紀)

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 『クリスタル・スカルの王国』のワールドプレミアは、2008年5月18日のカンヌ国際映画祭。その4日後に劇場公開されると、ジョージ・ルーカスとハリソンのキャリアで最高のオープニング記録を達成した。全世界興行収入は7億9,000万ドルで、年間成績は『ダークナイト』に次ぐ2位。ビッグスクリーンで暴れ回るインディ・ジョーンズを19年ぶりに見られることを楽しみにしていた観客が、いかに多かったかの証明といえる。(数字は Box Office Mojo調べ)

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 しかし、みんなが大満足だったかというと、微妙なところだ。シネマスコア社による観客の感想調査の結果は、3作目『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)の「A」から下がって「B」だった。映画批評サイト RottenTomatoes では、批評家が77%に対して観客は53%。『最後の聖戦』は批評家が84%、観客は94%だったので、やはり下がっている。不満点については、CGを使いすぎ、エフェクトのクオリティーが良くないなどの声が聞かれるが、そもそもCGがたくさん必要となったのは、ストーリーがSFの要素を含むせいだ。インディと敵が追い求めるのは、別世界からやってきた物なのである。

 舞台は冷戦下の1957年。インディと相棒のジョージ・“マック”・マクヘイル(レイ・ウインストン)は、ソ連兵の一団に誘拐され、ネバダ州にある米軍機密物倉庫に連れて行かれる。ソ連軍の大佐イリーナ・スパルコ(ケイト・ブランシェット)は、倉庫に保管してあるはずの長方形の箱を探せとインディに要求。こんなところに来たことはないし、何のことかわからず、インディはただ混乱。そんな彼に、彼女は、10年前にインディ自身が検証を求められた物だと思い出させる。

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 10年前といえば、1947年。その年、アメリカでは「ロズウェル事件」が起きた。ニューメキシコ州ロズウェル近くで墜落したUFOを米軍が回収したとされる事件だ。そんなふうに、オープニングの段階で、SF的な設定であることはすでに明らか。実際、その倉庫からインディが見つけてみせた箱を開けると、そこにはエイリアンの死体のようなものが入っている。その後、インディと突然現れたインディの息子マット(シャイア・ラブーフ)は、不思議な物体クリスタル・スカルをイリーナたちに奪われないよう守ろうとするのだが、それが何だったかがわかるクライマックスには、エイリアンのどアップが登場し、大きなUFOが宙に向けて飛び立っていくシーンが待っているのだ。

Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 このアイデアを考え出したのは、ルーカス。もともと『インディ・ジョーンズ』は、ルーカスやスティーヴン・スピルバーグが子供の頃、土曜の昼に見た冒険シリーズにインスピレーションを受けて生まれたものなのだが、4作目では1950年代前半のB級SF映画のようなことをやってみたいと思ったのである。スピルバーグとフォードは「UFOが出てくるなんてないだろう」と嫌がったものの、ルーカスは「絶対にエイリアンしかない。それ以外はうまくいかない」と主張。それでも、UFOよりエイリアンの進化した文化にもっと重きを置くことにし、そこからいろいろな脚本家がやって来ては新たな脚本が書かれていく中で、ついに3人ともが納得する話が完成した。

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 最終版の脚本を書いたデヴィッド・コープも、最初はSF的なこのコンセプトに反対し、ルーカスとスピルバーグに考えを変えるよう説得したとのこと。昨年出演したポッドキャスト「Script Apart」で、彼は、別のお宝を提案したとも語っている。しかし、フォードは、これはほかにもいろんなことを語るストーリーなのだし、観客はそのどこかに共感してくれるだろうと思ったという。フォードの場合、一番気に入ったのは、愛する女性マリオン(カレン・アレン)が再登場し、彼女との間に息子がいたことを知って、最後には結婚するという、インディの私生活の部分だった。たしかにその部分は、たっぷりのハートとユーモアを届けてくれる。

 ルーカスにとっては、同じことの繰り返しはしたくないというのも大きかった。1作目と違って暗いと言われ、あまり評判が良くなかった2作目『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のストーリーも、そこから来たものだ。違うことを探索し、新しい何かを見つけていくことは、ルーカスにとって大事なのである。

 もちろん、そんな中でも『インディ・ジョーンズ』らしいアクションは常にたっぷりだ。それこそ、このシリーズのDNA。『クリスタル・スカルの王国』でも、インディが米軍機密物倉庫から脱出する冒頭から、どたばたとスピード感に満ちたアクションが提供される。インディが砂地獄に落ちて、大嫌いな蛇をつかむか死ぬかの究極の選択を迫られるシーンも、とびきり楽しい。シリーズの最高作ではないとしても、この映画が作られた意味はたしかにあると言えるだろう。これがあったからこそ、最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(全国公開中)があるのだ。最新作に向けて準備をするためにも、今一度、この4作目を見直しておきたい。

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