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「カムカム」感動の再会シーンができるまで 一度きりの「I love you」を切り取った瞬間

「みんな一発本番の緊張感のなかでの撮影でした」
「みんな一発本番の緊張感のなかでの撮影でした」 - (C) NHK

 最終話を残すのみとなった連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土、NHK総合・午前8時~ほか、土曜は1週間の振り返り)。木曜日に放送された第111回では、かつて「I hate you」という言葉を最後に生き別れとなった安子とるい(深津絵里)が、数十年の歳月を経て対面する感動のシーンが描かれた。るいの歌う「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」のなかでのクライマックスと言えるようなシーンの撮影の裏側について、演出を務めた安達もじりが振り返った(以下、第111回までのあらすじに触れています)。

聖夜の奇跡…第111回【写真5枚】

 連続テレビ小説の第105作「カムカムエヴリバディ」は、昭和から令和にわたる時代をラジオ英語講座と共に歩んだ祖母・母・娘、3世代の親子の100年を描いた物語。ハリウッドのキャスティング・ディレクターのアニーヒラカワ(森山良子)が安子であるとわかったひなた(川栄李奈)は、るいと引き合わせるために懸命に奔走するものの、なかなかアニーの居場所を見つけることができない。

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 安子にとってもるいにとっても、そして錠一郎(オダギリジョー)にとっても、忘れがたい思い出の場所である岡山の旧進駐軍のクラブで「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を歌うことになったるい。安子の居場所がわかったにもかかわらず、自分と会おうとしていないという複雑な思いを抱く。だが、錠一郎のトランペットの音源とピアノをバックに抒情的に歌い上げるなか、ついに安子が登場。るいは一瞬目を見開いて歌を止めるが、思い返したように強い視線で歌い上げると、安子の元へ歩み寄り熱い抱擁。そして「お母さん、I love you」と思いを吐露する。

 この感動的なシーンについて安達は「トミーのトランペット、錠一郎のピアノ、そしてるいの歌と、演奏が絡んでくるシーンだったので、しっかり準備をして臨みました」と語る。「準備をしつつも、ここは本番一度きりの瞬間を切り取るしかないという思いは強かった。もちろんあの場に懐かしい方々もたくさんいたので、その皆さんを撮るために、何度かやっていただきましたが、るいと安子、ひなたに関しては一発で撮ると決めていました。だから、『I love you』というセリフも、どのぐらいの声量で言うかも、やってみなくては分からないというなか、音声部も撮影部、照明部などスタッフはみんな一発本番の緊張感のなかでの撮影でした」と撮影エピソードを明かす。

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 るいが安子に発した「I love you」という言葉の重みについて安達は「ご覧になっている人は『I hate you』というセリフのアンサーになっている言葉だとおわかりになると思いますが、視聴者のみなさんが『こんな瞬間があったらいいな』と思っている言葉で、脚本家の藤本(有紀)さんも、迷いなく書いてこられたセリフだったので、非常に大事なシーンだと思って撮りました」と述べる。

 また、ここでは深津ふんするるいと、森山良子ふんする安子が抱擁する姿に重なるように、かつての安子(上白石萌音)と幼少期のるいが抱擁するシーンが映し出される。このシーンは、本作クランクアップ直前に、上白石が再び現場に参加して撮影されたという。

 「幼少期のるいと抱き合うイメージシーンと、安子がロバートとアメリカに渡って暮らしているシーンの2シーンを改めて撮りました」という安達。「現場に戻ってこられたときは、少し涙ぐむぐらい喜んで帰ってきてくださいました。上白石さんはそのまま同じ安子を演じていただいたのですが、半年ぐらい間が空いていたので戻れるかとご本人は不安がられていたのですが、まったく問題なく安子だったので『完璧です』と言ったら、安心した表情を浮かべていました」と撮影秘話を明かす。

 上白石が参加した日には、深津も川栄も現場にやってきたというと、安達は「ようやく3人が現場にそろうことができた、大変貴重な一日でした」としみじみ語った。(取材・文:磯部正和)

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