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お花見ってなぜするんだろう?映画に答えが?

春といえば、やっぱりお花見ですね!
春といえば、やっぱりお花見ですね! - masahiro Makino / Getty Images

 いよいよ、お花見シーズンの到来! なぜ“お花見”というだけでこんなにウキウキしちゃうのか、誰もがいそいそ集まるのか。お花見や桜が出てくる映画から、その理由を探ってみた。(文:桑原恵美子)

その1.農耕民族としてのDNA

博士の愛した数式』 (2005)

 なぜ日本人が花見を始めたのか、諸説あるが有力なのが、桜の開花が農作業を始める目安だったこと。それを今も感じさせるシーンがあるのが、交通事故で記憶が80分しか続かなくなった初老の数学者(寺尾聰)と家政婦母子の触れ合いを描いたこの作品だ。家政婦の杏子(深津絵里)と10歳の息子は、共に暮らすうち次第に、博士が語る数学の純化された秩序の美しさに魅せられていく。

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 ある時、博士は杏子に誘われた散歩の途中、満開の桜を見上げ、「数学に最も近い仕事は農業だよ」と語りだす。「数学者もフィールドを選び、種をまけば、あとは一生懸命育てるだけ、大きくなる力は種の方にある」。その言葉は女手一つでの子育てに悩んでいた杏子に、息子の持つ“生きる力”を信じることの大事さを気づかせる。

 日本人が桜を見ると血が騒いだり元気になったりするのは、博士と同じように、満開の桜に自然の生命力の神秘を感じるせいかもしれない。

その2.お金をかけずに、確実に楽しめるから

男はつらいよ 知床慕情』(1987)

 北海道の知床を舞台に、無骨な獣医(三船敏郎)とスナックのママ(淡路恵子)の恋を後押しする寅次郎(渥美清)の奮闘を描くシリーズ第38作目。寅次郎が自身のかなわなかった夢を託し、シニアの恋を成就させるこの作品は、寅さんシリーズ後期傑作のひとつとされている。この作品の冒頭で寅次郎が語るのが、子供の頃の花見の思い出。

 「今では一本も残っておりませんが、わたしがガキの時分、江戸堤は桜の名所だったのでございます」「毎年春になると両親に連れられ、妹さくらの手を引いて、花見見物に出かける時のあのワクワクする楽しい気持ちを今でもまざまざと思い出します」。寅次郎の貧しいながらに幸福だった子供時代を彷彿とさせるセリフだ。

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 集まれる場所に桜があり、集まるメンバーがいればそれだけで盛り上がるのがお花見。お金持ちはお金持ちなりに、そうでないものはそれなりに楽しめることも、人気の理由のひとつだろう。

その3.みんなが幸せそうだから

SAYURI』(2005)

 青い瞳の不思議な美しさを持つ少女さゆり(チャン・ツィイー)が、運命に翻弄されながら多くの男を虜にする芸者に成長する物語。置屋での生活に耐えかねた少女時代のさゆりが、花見をする人々を見て涙ぐんでいると、通りがかりの紳士(渡辺謙)が彼女にさくら味のかき氷を買い与え、慰める。

 さゆりはその紳士に恋心を抱き、彼に再び会うためにだけ芸者を志す。後年、互いの気持ちを察し合うのもまた花見会の桜の下。作品の中で桜は、不幸な運命に流されていくさゆりと対照的に大地にしっかりと根付き、花を咲かせる幸せのモチーフとして繰り返し使われる。

 少女のさゆりが橋のたもとから眺める花見の人々は、誰もが楽しそうに笑っていた。桜を見ると幸せな気持ちになるのは、花見に集まっている人誰もが幸せそうに見えるからでもあるだろう。

その4.堂々と、昼間からアウトドアでお酒が飲めるから

SAYURI
美しい桜の花の下では自然と幸せな気持ちに……映画『SAYURI』より - Columbia/ Photofest / ゲッティ イメージズ

彼らが本気で編むときは、』 (2017)

 11歳のトモ(柿原りんか)は母親の育児放棄により、叔父のマキオ(桐谷健太)、彼と同居しているトランスジェンダーで恋人リンコ(生田斗真)と生活を始める。男なのに女装をしているリンコに最初はとまどうトモだったが、リンコの作る料理で初めて家庭の温かさを知り、次第に心を開いていく。

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 子供の日の休日、河川敷の桜の木の下で広げた花見弁当には、鯉のぼりにカットしたウインナーや、トモの大好きなシジミの醤油漬け、切り干し大根が入っていた。青空の下で食べるこのお弁当のおいしそうなこと。そしてマキオの飲むビールのおいしそうなこと!

 昼間から堂々とお酒が飲めたり、誰はばかることなく青空の下でお弁当を食べたりすることができることも、花見の最大の魅力のひとつだろう。

その5.桜の美しさが、小さなことを忘れさせてくれるから

『細雪』(1983)

 旧家・蒔岡の4姉妹それぞれの、昭和13年からの1年間を描いた名作。4姉妹の最大の行楽イベントである「京都のお花見」のため、料亭に集まった長女の蒔岡鶴子(岸恵子)、次女・幸子(佐久間良子)、三女・雪子(吉永小百合)、末っ子の妙子(古手川祐子)。険悪な会話からそれぞれが抱えている事情が浮き彫りになる。

 あわや大げんかになりそうな一触即発の雰囲気の中、「まあけんかはやめて花見しましょう」とナイスな提案をするのが、幸子の夫で養子の貞之助(石坂浩二)。外に出て桜を見上げると、姉妹たちは先ほどまでのいさかいを忘れ、たちまち花のような笑顔になる。

 桜の美しさは、見ている人の心を無にし、日常のゴタゴタや小さな悩みを忘れさせてくれる。いろいろあるけれど、今、桜を見ているこの瞬間は間違いなく幸せ。そしてその幸福感は、誰にも奪えないのだ。

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