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『ファインディング・ドリー』記録破りの大ヒット&続編に13年かかったワケ

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取材に応じたアンドリュー・スタントン監督 - ピクサーの長編1作目『トイ・ストーリー』から同社を内側から見てきた
取材に応じたアンドリュー・スタントン監督 - ピクサーの長編1作目『トイ・ストーリー』から同社を内側から見てきた - (c) 2016 DISNEY / PIXAR.

 先月17日に全米公開された『ファインディング・ニモ』(2003)の続編『ファインディング・ドリー』が、アニメーション映画の記録を次々と塗り替える大ヒットとなっている。オープニングの週末だけで1億3,506万273ドル(約135億602万7,300円)を稼ぎ、2007年の『シュレック 3』が作ったオープニング興収記録を抜いてアニメ作品として史上最高の記録を樹立。その後も勢いは衰えず、公開4週目には『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を抜いて今年1番のヒット作になっただけでなく、公開から1か月で累計興収は4億4,574万5,629ドル(約445億7,456万2,900円)に達し、『シュレック2』が2004年に樹立した記録を抜いて、アニメ作品として歴代1位の大ヒット作となった。(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル100円計算)(取材・文:細谷佳史)

日本でも100億円超を狙える大ヒット!『ファインディング・ドリー』ギャラリー

 しかし、大ヒットし、アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞するなど批評的にも大成功した前作『ファインディング・ニモ』の続編を作るのに、なぜ13年も時間がかかったのだろう? このシリーズの生みの親で、前作に引き続き監督と脚本を手掛けたアンドリュー・スタントンは、そもそも『ニモ』の続編をやることは全く考えていなかったそうだ。

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 「僕の中では、『ニモ』は終わっていたんだ。それは完全なストーリーで、語るべきストーリーは残っていないと感じていた。(『ニモ』で)4年間かけて魚の話をやるのは長かったし、僕には他のアイデアもあったから、その後、ロボット(『ウォーリー』)や火星の話(『ジョン・カーター』)をやることにしたんだ。それから、約8年後、2011年に3D版を公開した時(『ファインディング・ニモ 3D』)、僕は久々にこの映画を見直した。そして、映画を見終わった後、自分がドリーを心配していたことに気付いたんだ。彼女は、ニモとマーリンという素晴らしい家族を得たけど、『もし彼女が彼らのことを忘れて、また迷子になったらどうしよう?』とかね。彼女は、自分がどこから来たか知らない。彼女の中には、どこか喪失感があるんだ。僕はそういったことを解決したいと思ったんだよ」。

 ヒット作が生まれた後、スタジオやプロデューサーたちがアイデアやストーリーをしっかり煮詰めず、慌てて続編を作って失敗するケースはハリウッドには山とある。そんな中、ピクサーは『トイ・ストーリー』シリーズや『モンスターズ~』シリーズなど、続編においても常に質の高い作品を発表し続けている。それは『ドリー』のケースに象徴されるように、監督が“さらに描きたい”と思って初めて企画をスタートさせるという、フィルムメイカー中心の映画作りを心掛けているピクサーだからこそ成しえた技といえるだろう。

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 ピクサーにこうしたクリエイティブとビジネスのバランスが取れた環境がある理由は、ビジネス畑出身のエグゼクティブで構成されているハリウッドの大手スタジオとは違って、同社がユニークな才能が集まって出来たスタジオであることが大きい。ピクサーの長編1作目である『トイ・ストーリー』からキー・クリエイターとして活躍し、同社を内側から見てきたスタントンは、ピクサーの成功の理由について「ジョン・ラセター(アーティスト)、エドウィン・キャットマル(コンピューター科学者)、スティーヴ・ジョブズ(マーケティングの天才)によって作られた環境がとても大きな要素だ」と強調していた。

『ファインディング・ドリー』
ニモ親子とドリー - (C) 2016 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

 さらに、今回の大ヒットの背景に前作の人気の高さがあるのは間違いないが、それだけではこれだけの大ヒットにはならなかっただろう。作品のしっかりした評価があってこそ、初めて息の長い大ヒットにつながるのだ。『ドリー』は、大手映画批評サイト「ロッテントマト」で批評家から94%、観客から88%という高い支持率を獲得している。(7月20日時点)

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 『ドリー』が観客の心をつかむことに成功した理由は、映画の出だしでいきなり、子ども時代のドリーと両親のシーンを登場させるストーリーテリングの巧さにある。世界中の誰もが理解できる感情豊かなシーンを観れば、観客はその後、どんな状況においても、完全にキャラクターたちに感情移入してしまうのだ。スタントンは「僕は、観客がいきなりキャラクターと出会う映画やストーリーが大好きなんだ。映画の出だしでその人がどういった人かを知ってもらうのは、爆発シーンとか、チェイスシーンを描くより重要なんだ」とストーリーテリングの重要性について語っている。

 前作がヒットし、キャラクターたちが人々に愛されているとなれば、続編に対する観客の期待は一層膨らみ、フィルムメイカーたちにとってそのハードルを越えるのはさらに大変になる。スタントンも「良い作品を作るのは本当に大変だ」と言うが、毎回そのハードルをクリアし続けるピクサーの底力に驚かされる。今年、創立から30周年を迎え、世界一のアニメスタジオとなったピクサー。ストーリーテリングに対する貪欲な姿勢が変わらない限り、今後もピクサーは素晴らしい作品を発表し続けるだろう。

映画『ファインディング・ドリー』は公開中

【今月のアメリカ在住HOTライター】
■細谷佳史(フィルムメーカー)
プロデュース作にジョー・ダンテらと組んだ『デス・ルーム』など。『悪の教典 -序章-』『宇宙兄弟』ではUS(アメリカ側)プロデューサーを務める。

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