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坂本龍一、ベネチアの審査は紛糾!金獅子賞なしの案も…ハードな審査員体験明かす

第70回ベネチア国際映画祭

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ハードな日々も、70回の映画祭の歴史に感銘を受けたと明かした坂本龍一
ハードな日々も、70回の映画祭の歴史に感銘を受けたと明かした坂本龍一 - 写真:中山治美

 第70回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員を務めた坂本龍一がインタビューに応じた。7日に受賞結果が発表されたが、坂本は「世代も文化も職業も違う9人が集まって意見を一致させるのは難しかった」と初の映画祭審査員体験を振り返った。

 坂本が審査員の依頼を受けたのは今年6月頃。映画『ラストエンペラー』などの音楽を担当し、すでに審査委員長に決定していたイタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督から直接、メールで誘いを受けたという。「1日2本映画を見ればいいからという内容でした」。

 しかし、連日ハードな日々だったようだ。今年のコンペ作20本の内容は多くがドメスティックバイオレンスに殺人など、暴力に溢れていた。「世界的に顕著な傾向なのかもしれないが、皆が憂鬱(ゆううつ)にさせられました。暴力はストーリー性だけでなく、刺激的な映像や音の暴力性もあった。僕は音楽が映画の質を代弁していると思っているので、音楽がダメならNOと主張していました」。

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 加えて、開幕日にベルトルッチ監督が審査基準に対して“驚きを与えてくれる映画”と答えていたが、「それほど驚きのある映画、特別秀でた映画はなかった」という。

 ゆえに審査は約4時間に及んで紛糾し、一時は金獅子賞の該当作を無くし、銀獅子を5作ぐらいに与えようという案もあったという。「今回経験してわかったのは、審査委員長やメンバーによって受賞作品の傾向がかなり変わるということ。僕はデビュー作とか最後の作品だから特別な目で観てあげようということはしたくなく、他の情報は入れずに、自分の目と耳を信じて客観的に判断したい方。でもそうではなく、情報に影響されてしまった人もいましたね」

 続けて「自分がこの作品に賞を与えることで、自国でどう受け取られるのか? と気にする人や、自国の監督に厳しい人もいました。その度に『映画はユニバーサルな価値が大切なんだ』という話し合いになる。それが行ったり来たりしていた」。

 一方で、社会情勢が厳しかろうが映画を作っている人たちの多さにうれしい驚きと、70回という歴史を重ねリド島という狭いエリアで完結している映画祭の体制に感銘を受けたようだ。「何よりたくさん集中して映画を観るのは高校生以来。そういう意味では良い経験でした」。今後も機会があれば審査員を前向きに検討したいという。(取材・文:中山治美)

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