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一青窈が未亡人を熱演 震災直後の岩手県で撮影された「それからの海」完全版、劇場公開望む声

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「それからの海」
「それからの海」 - (c)NHK(Japan Broadcasting Corporation)

 東日本大震災後の岩手県田野畑村で撮影されたドラマ「それからの海」が11日、大阪アジアン映画祭に設けられた特別プログラム「メモリアル3.11」の中で上映された。

 同ドラマは故・吉村昭の短編小説「漁火」を原案に、津波で妻を亡くした漁師のもとへ、夫が同村の断崖から投身自殺した際に世話になったという親子が訪ねてくるところから始まる。その親子の目を通して被災地の現状を描いたもので、テレビドラマ初出演となった歌手・一青窈らと地元住民が、震災後初めて迎えた冬の約2か月間、一緒に作り上げたドキュドラマ(ドキュメンタリー+ドラマ)だ。

 2012年3月3日のテレビ放映時は73分だったが、今回は住民たちの被災体験を大幅に追加した147分のロングバージョンでの上映。高橋陽一郎監督は、震災直後の被災地でフィクションを撮ることに葛藤があったそうだが、“被災者に寄り添うこと”をキーワードに、地元住民の生活を尊重しながら仮設住宅での撮影も行なっている。

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 高橋監督は「もともとは『漁火』を映画化する企画を進めていたが、吉村さんが2006年にお亡くなりに。吉村さんは『三陸海岸大津波』(文藝春秋刊)などで災害に関する緻密な調査をし、田野畑村との縁も深かった。今回の震災が起こった時、吉村さんだったら何らかの作品を作ったのではないか? その精神を引き継げないかと思った」と、企画の成り立ちを説明した。

 劇中では脚本を基に住民たちも脚本に添って芝居をしているが、被災体験は実話で、高橋監督は「僕がシナリオで書いた言葉より強いものがあった」と明かす。フィクションを超えた言葉は俳優陣からも思わぬ感情を呼び起こし、一青窈が芝居を忘れて涙する印象的なシーンも生まれた。

 現地では2012年8月に完全版の上映会を開催したという。その際、住民から「懐かしかったです」という感想があったという。高橋監督は「僕らの中では(復興も進まず)何も変わってないと思っていたが、彼らの中では変化しているものがあったのかも。恐らく、この時期でしか撮れないものが知らず知らずのうちに記録されていたのではないか」と振り返った。

 現在のところ、テレビでの再放送予定も、ロングバージョンの上映予定も決まってないという。しかし、まさに被災者に寄り添うように丁寧に撮られた本作は映画祭でも話題になっており、今後、劇場公開を望む声も上がりそうだ。(取材・文:中山治美)

大阪アジアン映画祭は17日まで公開

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