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イランの巨匠アミール・ナデリ監督、「世間ではひどい映画が求められている」と映画界の現状に憤り!

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インデペンデント映画の現状に憤ったアミール・ナデリ監督
インデペンデント映画の現状に憤ったアミール・ナデリ監督

 30日、有楽町の日本外国特派員協会でイランの映画監督アミール・ナデリが、日本でメガホンをとった最新作映画『CUT』の試写会に駆け付け外国人記者を前に会見を行った。俳優の西島秀俊常盤貴子が初共演することでも話題の本作をアピールするだけでなく、昨今のインデペンデント映画の衰退ぶりに憤るといった場面もあり、「映画」というメディアについて熱く語った。

映画『CUT』場面写真

 監督が日本からの招待を受け製作された本作。「日本での仕事は難しかった。なぜなら飲み屋でスタッフやキャストを集められないからね」と開口一番ジョークを飛ばし、最新作の日本公開を前にご満悦の様子。日本で映画を製作した理由を「イランと日本は社会的、文化的構造が似ているから。また(本作で主演した)西島さんと親しくなり、ほかの日本人スタッフ・キャストとも親しくなったから」と日本での映画祭で西島と出会ったのをきっかけに、お互い親交を深めていったことから本作が生まれたことを明かした。

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 本作に出演した常盤が、異常な状況の中でも、ただ傍観してやり過ごす陽子という印象的なキャラクターを演じたことについて「直接本人と話し合いをして作ったキャラクター。あのような暴力的社会のなかで、ネズミみたいな存在でいたい。異常な場所にいても、普通に生活して歩き回っている。そのような人物を演じたいという話があったのでそうした」と常盤の熱烈なアピールから生まれたものだと明かした。

 また、昨今のインデペンデント映画の衰退ぶりを憤る場面もあり、「世間では、社会に浸透したひどい映画が求められているため、人気も収益も望めない良質のインデペンデント映画が製作されなくなってしまった。映画の歴史を知らない人々が増えて良い映画というものを人々が観ていないのが原因のひとつ」と警鐘をならした。

 続けてその現状を変えるにはどうしたら良いかとの質問に監督は「正直遅すぎて、手遅れでもある」としつつも「監督として出来ることは、芸術性の高い作品をつくり人々に広く知ってもらうことだ」と語った。本作『CUT』では暴力的なシーンが多数登場することに触れ「わたしがあのような激しいバイオレンスを使ったのは、芸術的な映画が追いやられていることへの怒りの表現でもある。今映画を作る状況はひどくてパンチを食らっているようなもの。その怒りを表現するのにバイオレンスシーンが必要だった。インディペンデンスな映画には居場所がない」と世界中で良質な作品が製作されなくなってしまった現状を嘆いていた。

 本作はイランの巨匠アミール・ナデリが日本に招かれて監督した異色作。売れない映画監督の秀二(西島)が、自分のためにやくざから借金をして死んでしまった兄に報いるため、殴られ屋をして借金を返済しようとする物語。主演の西島は東京フィルメックスで監督と出会い抜てきされた経緯を持つ。(翻訳:せのうとおる、取材・文:池田敬輔)

映画『CUT』は12月17日よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開

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