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アンダー・ザ・シルバーレイク (2018):映画短評

アンダー・ザ・シルバーレイク (2018)

2018年10月13日公開 140分

アンダー・ザ・シルバーレイク
(C) 2017 Under the LL Sea, LLC

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

清水 節

虚構に溺れ煉獄に留まる男の狂気が、ハリウッドの深層へと迫る

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 LAのシルバーレイクと呼ばれる貯水池=人工湖は、この街を象徴する「銀幕」の暗喩。消えた美女を探し求め、ショウビズを夢見て憔悴した男は、都市の迷路を分け入りハリウッドの深層に迫っていく。ちりばめられたポップカルチャーの記号をパラノイア的に解読し、陰謀論的な真実ににじり寄る。描いているのは単なる闇ではない。虚構に耽溺し、煉獄に留まったままの男の狂気だ。表現の世界を志した者なら、この探偵小説的な時空に共鳴できるはず。だが、衒学的タッチで惹き付けておきながら、その彷徨のあまりの分かりやすさへの帰結には唖然とする。これが現代のリアルなのか。新世代のD・リンチ、R・アルトマンの誕生とまでは至らなかった。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

映画の都の暗黒面を垣間見るダークファンタジー

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 世にも奇妙な怪作であることは間違いないだろう。舞台はハリウッド近郊の住宅街シルバーレイク。夢破れた若者が失踪した美女の行方を探る。全編に散りばめられるクラシック映画やポップカルチャーからの引用。やがて若者は煌びやかな街に隠された陰謀の匂いを嗅ぎつける。ロサンゼルスは過去の伝説が息づく場所だ。ドライブ中に遭遇するサイレント映画スターの豪邸、撮影スタジオの片隅に佇む黄金時代の名残。それはさながら「夏草や兵どもが夢の跡」。世界中の人々に夢と希望を与え続けるハリウッドは、世界中から集まる人々の夢と希望を食い物にしてきた街でもある。これはそんな映画の都の暗黒面を垣間見るダークファンタジーとも言えよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

現実からシュールな闇世界へ越境するLAの悪夢

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『インヒアレント・ヴァイス』のような生活感のあるLA探偵ストーリーを、デヴィッド・リンチが撮ったらこうなるか…と思わずにいられない怪作。

 前半は現実的なトーンで展開するが、後半はシュールな方向へ。主人公が踏み込む暗部の底なし感が鮮烈で、謎解きにこだわらなければ、リンチ映画のようなキテレツな世界を楽しめるだろう。ローラ・パーマー的存在感を放つR・キーオがイイ。

 前作『イット・フォローズ』でストーリーテリングの巧みさを見せつけたミッチェル監督の手腕は健在で、映画の中にグイグイと引きこんでくれる。音楽や小道具を含め、詰め込み過の気がしないでもないが、監督の才気は確かに感じ取れる。

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平沢 薫

いかがわしくてへなちょこなハリウッド地獄めぐり

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ハリウッドの片隅で暮らす主人公が、突如失踪した女の子の行方を追って、ハリウッドの周辺をウロウロする話なのだが、主人公が足を踏み入れてしまった迷宮には、ハリウッドのいかがわしさが充満、そこに地下コミック、ヒットソング、都市伝説などのポップカルチャーネタが大量混入されていて、さながらへなちょこな地獄巡りの様相。こちらも主人公と一緒にふらふらと彷徨いながら、地面に足がついていない感じ、現実と虚構が判別不能な軽い酩酊状態が味わえる。
 同時に、水の中の乙女、鳥頭の女、という古典的イメージが少し形を変えて反復され、それらのイメージの響き合いが、このうろんな迷宮の奥深さを感じさせたりもする。

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森 直人

パワフルなテクストの集積にざぶんと入る(プールにご注意!)

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

前二作からの流れで観ると、完全にD・ロバート・ミッチェルの三部作かつ全面展開だ。青春の終わりを迎えた三十路男がポップカルチャー陰謀論の狂った探偵となり、アソシエイションからR.E.M.までの選曲も含めて完成しないパズルのピースが用意される。

露骨に『サンセット大通り』『A・ウォーホルのヒート』『マルホランド・ドライブ』などLA/ハリウッド郊外悪夢譚の系譜だが、その本質を最も明晰に浮き彫りにした後継と言える。要はポストモダンな現実、消費社会の霊園を生きる事。我々の琴線に触れるのは、おもちゃ箱的な快楽の裏にある虚無と哀しみの詩情。そして最近オッと思う米映画はこの会社じゃんという「A24」は凄い!

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

ちょっとデビッド・リンチ風の奇怪なノワール

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

L.A.の街で、主人公が、これまで知ることのなかった謎に出会い、どんどんと深みにはまっていくこの映画は、奇怪で、ちょっと恐ろしく、エロチック。あちこちでデビッド・リンチを思わせるが、それよりは手加減している。主人公サムが、数日のうちにたくさんのことに直面し、それらが何かにつながっていくのだが、その結果は、正直、物足りない。雰囲気は複雑でも、その中身にはそれほど厚みがない感じだ。ただ、ここのところ続けて、非常に重い、昔が舞台の映画に主演したアンドリュー・ガーフィールドが、現代のL.A.の、ただぶらぶらした男を演じるのを見るのは、新鮮で楽しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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