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『さそり』水野美紀 単独インタビュー

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『さそり』水野美紀 単独インタビュー

香港でのアクション撮影は、自分との闘いだった

取材・文/斉藤由紀子 写真/高野広美

あのクエンティン・タランティーノに大きな影響を与え、映画『キル・ビル』シリーズのベースになったといわれる伝説の日本映画『女囚701号 さそり』が、新たなアプローチでスクリーンによみがえった。香港のジョー・マ監督ほか、アジアのスタッフとキャストによってリメイクされた映画『さそり』は、婚約者の父親を殺した罪を着せられ、復讐(ふくしゅう)に燃えるヒロインの生き様を描く怒とうのアクションムービー。本作で主人公の松島ナミを熱演した水野美紀が、初めて挑んだ過激な香港アクションや香港グルメなど、撮影の裏話を語ってくれた。

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復讐(ふくしゅう)することに快感を覚えるヒロイン

水野美紀

Q:かなり大胆な『さそり』のリメイクですが、完成した作品をご覧になった感想は?

とにかく世界観が独特ですよね。ナミには人殺しの才能があって、復讐(ふくしゅう)の過程で刀を使うことに快感を覚えるというのもオリジナルにはない設定ですし。後は、婚約者に対する気持ちが、愛情なのか憎しみなのか最後まで予測がつかないストーリー展開も斬新でした。

Q:梶芽衣子さんが演じたオリジナルを参考にされた部分はありますか?

この映画の出演が決まってからオリジナルを観たんですけど、梶さんの存在感が圧倒的過ぎて、参考にしようがなかったです。自分は、まったくの別ものとしてやろう! と思いました。

Q:ワイヤー・アクションの本場、香港での撮影はいかがでしたか?

セッティングも撮影も、ものすごくテンポが速いんです。日本だと、セッティングや安全面の確認に時間をかけるんですけど、香港のスタッフはワイヤーに慣れているので、待ち時間があまりない。殺陣の動きも、アクション監督が現場に入ってから作るんです。動きができたら1、2回お手本を見せてもらって、それを覚えるために数回やったら、すぐにカメラの前に連れて行かれるんですよ。やっと覚えたというくらいで、もう本番。常にいっぱいいっぱいな感じでしたね(笑)。

アクションシーンでビルの4階からダイビング!

水野美紀

Q:壮絶なアクションシーンの連続でしたが、撮影中にケガはしませんでしたか?

無理なことは無理だと伝えて、とにかくケガをしないように注意をしていました。それでも、アクション中に相手のケリがわき腹にはいってしまって、一瞬、息ができなくなってしまったことがありましたね。それから1週間くらいずっと痛くて、寝返りがうてませんでした。

Q:まさに体当たりのアクションだったんですね!

ビルの4階から落とされたこともありましたよ。最初はスタントの方がやってくれるんだろうと思って、のんびりセッティングを見ていたんですけど、スタッフにコッチコッチって呼ばれて、「わたしがやるんだ!」ってビックリしました(笑)。結構ムチャさせてもらいましたね。日本だったらすごく慎重になるんですけど、香港の人は、やれば何とかなる! とりあえずやってみよう! という精神なんです。

Q:なるほど、だから香港のアクション映画は、独特のパワーがあるのかしれませんね。

それは現場で感じました。スタントの方たちは、どんなに危ないことでも、たとえ自分の中でできるという確信がなくてもやってしまうんです。とにかく勢いよくやる。それが香港映画ならではのパワーになっているんでしょうね。わたしの場合も、カメラの前に立ったら怖いなんて言っていられない。覚えたばかりの動きでも、自分はできるんだ! って自信を持ってやらないとうまくいかないんですね。だから、香港での撮影は自分との闘いという感じでした。

とにかく新鮮だった香港スタイル

水野美紀

Q:撮影中は、天候でも苦労されたそうですね?

共演したブルース・リャンさんが、すごい雨男だったんですよ! しかも、雨だけじゃなくて、風やカミナリまでしょってくるんです(笑)。彼が撮影現場にくると、急に風向きや雲行きが変わることがあるので、本人の姿が見えなくても近くにいるってすぐにわかるんですよ(笑)。

Q:そのたびに撮影が中断されてしまったのでは?

いえ、そのまま雨の中で撮影していました。香港は天気待ちで時間を使わないんですよ。とにかく、細かいことは気にしないでどんどん撮影していくんです。台本も変わっていきますしね。

Q:でも、現場で台本が変わってしまうと戸惑いませんか?

そうですね。しかも、台本はその日に撮影する分しか渡してもらえないんです。だから、台本を読んでも意味がわからないところがあって、監督とよく現場で話し合いました。完成したものは監督の頭の中にしかないので、全体のイメージをつかむのに苦労しましたね。日本との撮影の違いで一番大変だったのは、そこかもしれません。

Q:香港ならではのスタイルですね。衣装も日本にはない独特のセンスを感じました。

針を振り切った感じですよね! 真ん中がないというか。例えば、囚人服をあんなミニスカートにする必要なんてないじゃないですか! あれは本当に斬新でした(笑)。日本での撮影だったら「短過ぎて絶対おかしい!」って言っていたかもしれないんですけど、何しろ香港なので、"郷に入れば郷に従え"という感じでした。

撮影の疲れを吹き飛ばした薬膳スープとは?

水野美紀

Q:休憩時はどのように過ごしていたんですか?

足ツボマッサージによく行きました。あちらは値段も安いし、予約しなくても気軽に行けるんですよね。しょっちゅう通って癒されていました。

Q:食の都・香港ということで、食事も楽しまれたのでは?

はい! 後半は火鍋ばっかり食べていました。薬膳効果があるのですごく元気になれるんです。スープだけでも30種類くらいあって、具は200種類くらいから選べるので、毎日飽きずに食べられました。後は、疲れたときにプロデューサーさんが連れて行ってくれたのが、薬膳スープの店。それも種類が豊富で、肌にいいもの、疲れに効くものとか、いろんな効果があるんです。スープ自体もすごくおいしいんですよ! あの店、日本にもあればいいのにって、ずっと思っているんですよね。

Q:いいですね! ぜひ日本に紹介してください!

じゃあ、もう一回香港に行ってリサーチしてこなきゃ(笑)。本当に、日本でも味わえたらいいですね。

Q:では最後に、映画の見どころや、これから観る方へメッセージをお願いします。

見どころは、何といっても大胆に針を振り切っているところですね。衣装もそうですし、ストーリーやカット割りもそうですし。梶さんの『さそり』が、香港に行くとこんなにも変化するという、その違いを楽しんでもらえたらと思います。


水野は、とても気さくで話していて気持ちのいい女性だ。しなやかな身のこなしや全体に漂う清涼感は、まるでアスリートのようでもある。今回の撮影は、体力的にもかなりハードルが高かったそうだが、新たな挑戦や発見を経て、着実にステップアップしているように感じた。そんな彼女が文字通り体当たりで挑んだ『さそり』は、日本でもない、香港でもない、無国籍な魅力とパワーが観る者を圧倒する。きゃしゃな体に強烈なバイタリティーを秘めた水野が、本格派アクションスターとしてアジアを席巻する日も遠くはないかもしれない。

『さそり』は8月8日より銀座シネパトス、シネマート六本木ほか、全国順次公開

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